2013年5月31日
気になる現象だ。1500ドル台から1300ドル割れ寸前まで暴落した金が30日は急騰。1400ドル台を回復したのだ。
米ドルの代替通貨として買われ、また、市場がリスク回避モードに入ると逃避マネーが流入する金の価格は、市場規模が限定的ゆえに、マーケットの潮目が変わる直前に先行指標的に動くことが多い。
先週までは、ドル高観測が強まるなかで、ニューヨークの金先物市場ではファンドなどの大口投機家が新規の売りを膨らませていた。米商品取引委員会(CFTC)によると、大口投機家による売り注文の未決済残高(建玉)は21日時点で10万9124枚と過去最高水準に達していた。
しかし、日本株の乱高下がニューヨーク市場でもリスクオフ・ムードを誘発し始めた頃から、徐々に金価格レンジの下値が切り上がり、リスク回避マネー流入の兆しが出始めていた。
そして、30日。最新雇用情勢の指標として注目される米国新規失業者申請件数の4週平均値が34万7250人とベンチマークの34万人を上回ったことでドル安が加速。米GDP改定値が市場予測の平均(2.5%)を下回ったこともドル売りを誘った。
欧米金市場では、ドル高ドル安を判定する際のベンチマークとしては、暗黙の前提で対ユーロのドル相場が使われるのだが、アベノミクス円安が示現して以来、対円のドル・レートも注目されている。
30日もドル円が100円の大台を割り込むドル安・円高になる可能性が嫌気され、ドル買い・金売りポジションをかかえるヘッジファンドなどが一斉に巻き戻しに走ったのだ。
ニューヨーク金市場では、JGB(日本国債)リスクも意識され、相対的安全性を求めるマネーが金に流入する現象も見られる。最大の逃避先である米国債市場で売りが先行し利回りが上昇傾向にあるので、次善の選択として金が浮上しているのだ。
いまや、ジャパン・リスクが国際金価格にも影響を与える状況になった。日本株を売却したファンドが、当面、金市場にマネーを「パーキング」させる事例も見られるので、株価と金価格の逆相関性の観点からも、金価格が先行指標としてウオッチされている。