豊島逸夫の手帖

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いつまで続く、量的緩和の宴

2013年12月5日

4日のニューヨーク債券市場では、10年債の利回りが2.83%にまで上昇した。一方で2年債の利回りは0.29%に留まっている。
市場は、この10年債と2年債の利回りに常に注目している。
現在は、2.54%。
この長短利回りスプレッドは、歴史的に見ると、3%を上回ったことはない。3%に接近した時期は、2003年、2010年、2011年に示現している。現在の2.5%台は、レンジの上限近くということになる。
足元で、10年債の利回りが上昇傾向にあるのは、やはり、FRBが債券買い取りプログラムを縮小するであろう、との観測に切迫感が強まっているからだ。米国国債の主な買い手はFRBと中国と日本。
その中で、FRBが買い取りを縮小更に終了すれば、国債の需給はだぶつく。中国と日本が米国債購入を急増させることは考えられない。(バイデン副大統領が北京で習近平国家主席との会談で、日本が期待するほどの強硬な姿勢に出きれないのも、米国債購入顧客への配慮かもしれない。)

一方、FRBは政策金利を長期にわたりゼロ金利に近い低水準に維持する方針は変わっていないので、2年債の利回りは低く抑えられている。
結果的にイールドカーブ(利回り曲線)が立ってきた(steepになってきた)。
いまやイエレノミクスという新語も聞かれるが、量的緩和を縮小しても次期FRB議長の緩和姿勢は基本的に変わらないので、短期金利は歴史的な低水準に2015年(あるいは2016年)まで抑えられよう。
しかし、国債買い取りが終了すれば、長期金利は上昇する。
冒頭に述べたように、長短金利差の歴史的上限が3%なので、10年債利回りは3.25%程度までの上昇が見込まれる。
仮に3.25%を上回るとすれば、長期的なインフレ懸念、或いは米国債デフォルト懸念などで米国債に見切り売りが入る結果の「悪い金利高」となるシナリオであろう。
(「良い金利高」とは、経済活動が活性化して健全な資金需要が市中で増加するケースである。)

足元の市場環境では、米雇用統計の「前座」ともいえるADP全米雇用報告が4日に発表され、11月の民間雇用者数増加が事前予測の16万―17万を大きく上回る21万5000人となったことが、10年債利回り上昇の主たる要因となった。
良い経済指標が出ると、12月量的緩和縮小開始説が強まり、債券も株式も売られる。「良いニュースは悪いニュース」といういびつな市場の反応がすっかり定着してしまった。
逆に「悪いニュースは良いニュース」となり、株価を押し上げる。
しかし、これは市場が米国経済の本格的回復に自信が持てず「QE=量的緩和依存症」から抜け切れないためだ。
「良いニュースは良いニュース」という本来の市場の反応が戻ったときに、「資産インフレ」のレッテルを貼られない、持続的な株価上昇が見込める。

米国は、量的緩和というステロイドを抜いた状態での株価上昇を試す段階に入っている。
しかし、日本は、これからステロイド投入を増量するという「期待感」で株価が上昇してきた段階だ。業績相場へのシフトといいたいが、まだ銘柄が限定される。
米国の例から見れば、2014年も日本はステロイド相場が続きそうだ。アベノミクスという「壮大な実験」の結果が出るのは2015年以降であろう。その間は、投資家の忍耐が試される。
筆者は澤上篤人氏とスイスつながりで20年来の友人でもあり長期投資派であるが、QEパーティーが来年も続くとすれば、せっかくだから参加するが、本音は会場の出口に近い場所に陣取りたいと思う。

なお、円相場については、イエレノミクスの基礎的緩和バイアスが続く限りはドル安(円高)要因からも目が離せない。3日付け日経コラムで「金急落、本当の下げは米緩和縮小の先に」と書いたが、本当のドル高・円安も米緩和縮小の先にある。筆者は1ドル=120円説だが、実現の時期は2015年と見ている。

さて、金価格はクリスマス前の空売り買戻しラリーで1240ドル台まで急反発。その前に1210ドル前後まで急落した局面もあった。為替が円高に振れているので(といっても102円台だけど)、円建て金価格には依然値ごろ感あり。それからプラチナの価格水準も下がって、買い頃。「急落」と聞くと、買いのアドレナリンが出る(笑)。

もう12月。今年は昨年より忘年会が多いみたい。会場も昨年より立派な感じ。これってアベノミクス株高の資産効果かね~
まぁ、酒飲まないから、夕方早く始めて、夜9時までには宴を終えて、帰ってからNY相場フォローというパターンだけどね。
このところ、毎晩、もろもろ「2014年市場展望」原稿に追われて、寝不足気味。年末進行だから、月中旬までがピーク。
テーマは、マクロ経済と金市場と半々くらいの感じ。

昨晩10時からの日経プラス10でも、「本日のニュース10」の3位で紹介してくれた。知らない日経のおじさんだけど、好きになった(笑)↓
http://www.bs-j.co.jp/plus10/

2013年