豊島逸夫の手帖

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防空識別圏の余波、円安そしてTPP交渉まで

2013年11月28日

来週、米バイデン副首相が日本、中国、韓国を訪問する。
米軍が爆撃機を飛ばしたのも、同氏訪中を控え、米国側の強い意志表示だったのだろう。
同氏は習近平中国国家主席が副主席時代に旅行を共にするなど交際があった。中国内部事情にも精通しているといわれる。2011年にも同氏は北京を訪問している。そのときは、米軍偵察機と中国軍用機との台湾上空でのニアミス事件の「証拠写真」を持参して直談判に及んだ。
今回の状況は、東シナ海に米空母ジョージ・ワシントン号が向かい、日米合同軍事演習が「通常の演習として予定通りに」遂行される。対して、中国保有の唯一の空母は、これも領土問題がくすぶる南シナ海に向かうようだ。
ちなみに、中国の空母は1998年にウクライナから購入した「博物館もの」と言われる。
このような緊迫した状況の中で、バイデン副大統領は、中国側の意図も含め、事態を明確に把握することに努めることになりそうだ。
同時に、中国が突如設定した識別防空圏については、「応じる意思がゼロ」を伝える予定だ。但し、後述する二大大国間の基本的スタンスに鑑み、強い対決姿勢を示すことは、まずないだろう。直ちに新識別防空圏の撤回まで迫るか否か、微妙なところだ。
楽観論としては、習近平中国国家主席が、「経済改革」の優先順位を重んじ、リスキーな軍事的行動は回避するとの見方も中国国内にはある。
対するオバマ大統領にとっても、この時期の米中直接対話は、悩ましい。
そもそも、海上の紛争が、空中も巻き込む二次元になってしまった。

更に、米中関係の基本的スタンスは、相互の競合部分を認めつつ、二大大国として利害が一致するところは協力関係を構築すると両国で大筋確認している。対決姿勢を強めることは二国間の国益も損ねる。
従って、防空識別圏を飛んだ2機のB52爆撃機も「非武装」で「通常のミッション」であったことを強調している。グアムから飛び立ち、新たな中国防空識別圏を1時間未満飛行した。尖閣有事の際は米軍グアム基地からの発進になるとも推測されている。

一方、中国国内では「海南島事件」の再来を憂い愛国心を煽る言動も見られる。2001年に海南島付近の南シナ海上空で、米中軍用機が空中衝突して墜落した中国戦闘機のパイロットが死亡。米国側の偵察機も海南島に不時着して24名乗員が11日間にわたり身柄を拘束された事件である。米国側が中国人パイロット死亡を「遺憾」と認め解放された。「あのパイロットの屈辱を繰り返すな」などの識者コメントが流れる。
中国版ソーシャル・メディアには、反日書き込みが目立つ。

なお、日本にとっては、識別防空圏問題の影響の拡大が懸念材料だ。
まず、北朝鮮核問題の政策優先順位が相対的に低下する可能性がある。
そして、今回米国側に大きな「借り」を作ったことで、TPPにおける日米交渉で、米国側の発言力が強まり日本側がトーンダウンを余儀なくされる展開も考えられる。
最終的には総体的日米関係を吟味して、決断が官邸の大局的判断に委ねられることになろう。

なお、昨日日経コラム「防空識別圏で増える市場のリスクシナリオ」で有事のドル買いがチャート上の抵抗線を抜くキッカケになる可能性に言及したが、早くも現実となり、ドル買い円安が加速。102円の大台を突破している。
金は空売りの買戻しで1250ドル台まで戻したが、あとが続かず、1230ドル台まで下落。
プラチナが1350ドル台まで急落。これは値頃感あり。
半年も持てば、いずれ南ア関連の供給不安材料で上がると思うよ。
但し、円安が予想以上のスピードで進行しているので、円建てではそれほど下がらないけどね。
市場では短期投資家の見切り売りと長期投資家の新規買いが飛び交っています。短期のスタンスと長期のスタンスの違いが鮮明です。

ところで、今日の日経朝刊一面に「日経dual」(働くママ&パパに役立つノウハウ情報サイト)創刊告知が出ています。
私も、趣旨に共感するので、寄稿することになりました。
2000字ほどの原稿を書いています。

それから、京都は祇園の行きつけの「らく山」から連絡があって、私のブログ読者の来店が多いそうで、先日は同じ日に二組も重なったりリピーターもいるとのこと。これからは、えびいも(大きくてホックリでクリーミー)とか大根の炊いたんとかマル(グツグツ熱くてやけどしそうなスッポンのスープ)とかフグのぶつ切りとか、書いているだけで、よだれがでそう。おまかせで一人12000円だけど、祇園の他の店なら倍はとるね。それくらいボリュームも種類も豊富。(たとえば、魚津屋も好きだけど値段が高い。)ミシュランの星もとっている。大将は、ミシュランより、アユ釣り名人で、そのほうが好きだけど。12月9日には私も行ってますよ。昼に野村証券の京都支店で講演頼まれているので終了後、夜に気楽に寄ります。私は酒は飲まない、ひたすら食べるだけ、と聞くとビックリされるけどね。

2013年