豊島逸夫の手帖

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円安再開、金小売価格5000円接近

2013年1月10日

87円台の調整・値固めが48時間で終わった。10日のアジア時間帯では早くも88円台回復。
投機筋の売買回転が効いている。
90円をつけるなら、勝負はこの2週間だろう。
筆者は、「チューリッヒの子鬼」と呼ばれるスイス銀行外国為替貴金属部で、いわゆる「通貨投機筋」のキャリアを12年間経験した。
その現場感覚から言うと、相場が「期待先行」とか「過熱感漂う」などと評され警戒感が市場に満ちているときが、投機筋には最も「仕掛けやすい」状況だ。市場参加者のココロが揺れている時である。
今回も、具体的には1月21日~22日の日銀金融政策決定会合までが円安仕掛けの勝負どころと見ている。それまではアベノミクスへの期待感も維持される。
しかし、会合で日銀が安倍首相の「希望」に答えれば、そこが利益確定円買戻しのタイミング。材料としての新鮮味は薄れ陳腐化する。
答えずば、失望感が席巻し、円売りポジションの手仕舞い買いとなる。どちらに転んでも、短期的な円売りモメンタム(勢い)は削がれよう。
この売買サイクルが一巡すると、日本の財政規律を懸念する「悪い円売り」が第二ラウンドで顕在化する可能性がある。
そして、これまで円に「逃避」していた足の長い投資マネーの「円離れ」は市場の底流として続くであろう。

昨日は、欧米市場がいかに東京市場の動きを熱くウオッチしているか、あらためて痛感した。筆者のインタビュー記事がワシントン・ポスト紙など海外のメディアに載り、各国の市場関係者からの問い合わせに深夜まで追われたからだ。
記事のヘッドラインは
"Gold lures Japan's pension funds as Abe targets inflation(安倍首相のインフレ・ターゲットで日本の企業年金、金に動く)"
という「観測記事」で、筆者も「まだpeanuts(ピーナッツ)。大したことない」とコメントしているのだが、市場の期待感が先行して、情報が独り歩き。「日本の金買い」のような捉え方をされた。
このような現象は、ペイオフ解禁以来のことだ。

2013年