豊島逸夫の手帖

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史上初、ダウと金 三桁下げ

2013年4月16日

15日のニューヨーク市場で金価格が続落。一時1334ドルまで下げ、引け後の時間外取引では1347ドル前後で推移している。前日比8.8%の下げ。2日で200ドル以上の急落となり、1980年以来の記録的下げ幅である。

同日の金を含め商品価格の急落はニューヨーク株式市場にも波及し、ダウは265.86ポイントと今年最大の下げ幅を記録。14599.26ポイントで引けた。
ダウと金が同日に三桁急落するという現象は史上初である。



震源地は中国。
同日アジア時間に発表された中国経済成長率(1-3月期)7.7%という予想外の減速で、市場には衝撃が走った。
特に金市場は中国需要がこれまでのレンジ下値であった1500ドル台を支えてきたので、経済成長率鈍化による需要減退観測により、相場が下放れたのだ。
外為市場では中国景気減速懸念によるリスクオフが、逃避通貨としての円買いを誘発した。

また、同日発表された米国住宅関連指標も芳しくなく、足元ではマクロ経済指標の悪化が目立ち、米国景気のソフト・パッチ(ぬかるみ)懸念が台頭している。
総じて、米国、欧州、そして中国の同時景気減速懸念も無視できない状況だ。
結局、金暴落により投資家がリスク回避傾向を強め、マネーが円とドルに逃避したことで円高が96円台まで進行している。



特に、金価格は売りが売りを呼ぶ「劇場のシンドローム」状態。
狭い劇場で、誰かが火事だ(売りだ)と叫び、観衆が非常口に殺到する現象のことである。先物市場では追加証拠金が払えないことによる、買いポジションの強制手仕舞いも目立った。パニック状態といっても過言ではあるまい。Fear (恐怖)トレードともいわれるが、投資家が恐怖感から、とにかく売って逃げている。

15日の本コラムでは、下げの目途を「1450ドルか」としたが、中国経済成長率予想外の鈍化で、あっさり破られてしまった。

中期的に見れば、今が底値圏だと思うが、市場に異常心理が支配しているので、当面は下値模索が続きそうだ。

円建て金価格の下げもきつい。昨日の金小売価格は前日比432円安の4851円。買い取り価格も4767円まで急落した。日中の価格乱高下で小売価格も変更され、記録的な下げ幅となっている。

筆者の30年以上の相場人生の中でも忘れられない日となった。

2013年