豊島逸夫の手帖

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イエレン氏からのクリスマスプレゼント パート2

2013年11月15日

米上院銀行委員会におけるイエレン次期FRB議長候補と議員との質疑応答は2時間を超えた。FRB副議長ではなくFRB議長候補として公の場での初お目見えであったが、共和党議員からの量的緩和政策に対する懐疑的質問にも、冷静かつ論理的な答弁であった。一貫して笑顔も絶やさぬ振る舞いであったが、共和党議員からの「FRBは、自らの金融政策と市場のprisoner=虜になっているのではないか」との問いには、表情を硬くして「我々は、金融政策の市場に対する影響を考慮している。金利が急騰した時には、我々の目標達成に対して脅威となるか自問自答したこともあった。FRBは市場の虜になるべきではないし、なることもできない。」と明確な答弁で応じた。質問した議員は「私自身が虜になっていたのかもしれない。」と語り質疑応答を終えた。
今後、米国更には世界の金融のかじ取り役となる67歳の女性にふさわしい凛とした振る舞いは、市場にも安心感を与えたことは間違いない。
下世話な筆者などは、大河ドラマの「八重」を連想してしまった。

さて、これで、日米欧三極同時緩和という状況が鮮明になった。
日本は黒田日銀への追加緩和期待。欧州では14日にはEU圏の7-9月期経済成長率が0.1%と発表され「日本型デフレ」の可能性などが論じられる。ECB高官の口からも「マイナス金利」「量的緩和」などの非伝統的金融政策導入の可能性が語られるようになった。

市場は、イエレン氏からの早めのクリスマス・プレゼントに沸き、リスクオンの様相だ。
しかし、イエレン氏は、未だ正式なコメントでは何も「イエレン色」を打ち出していない。これまでのバーナンキ路線の実質的踏襲を示唆する発言に終始している。
新FRB議長としての真価が問われるのはこれから。
特に、緩和縮小は開始時期の問題であり、その方向性が変わることはない。変わるとすれば、フォワード・ガイダンスの中での引き締めへの転換条件であろう。物価上昇率、失業率の目標変更の可能性である。
日経コラム11月5日「イエレン氏の描く具体的利上げシナリオ」に載せた「最適コントロール」のターゲット値などが改めて論じられるかもしれない。
とはいえ、現実に戻り、世界の市場を見れば、リスクマネーがマグマの如く沈殿した状況だ。早くもクリスマス・プレゼントに反応して火山活動を開始したような段階である。
但し、このプレゼントの賞味期限には注意すべきであろう。
リスクオンのパーティーは、中締めも早い。

さて、金価格は、このような市場環境ゆえ、反騰。
といっても、1280ドル台だけど。
円高に振れたら、円建て金を買い始めたい気持ち。
プラチナとの値差も170ドル近くにまで拡大したので、プラチナは面白いけど、今は、割高感があるな。

そろそろ2014年市場展望を頼まれる季節になってしまった。
早い一年だったな。よく遊び、よく働き、充実した一年だった。まだ1ヶ月以上残ってるけどね(笑)。

2013年