2013年1月16日
急激な円安の調整のキッカケは意外な方向から来た。
15日のアジア時間帯、昼12時前。89円60銭をつけ、90円突破のカウントダウン開始とマーケットが身構えた直後の絶妙なタイミングで「甘利発言」が流れた。
「過度な円安は国民生活にマイナスも」との「釘刺しコメント」は効いた。30分ほどで1円もの円急反発。ここでドル円相場は88円台の調整局面に入った。
もし、甘利発言なかりせば、値固めの期間もなく、90円突破して更に急速な円安が進行したかもしれない。その場合の反動(円反騰)も急激になったであろう。結果的に逆V字型の「円安バブル相場」で終わったかもしれない。
その意味で、甘利発言は中期円安サイクルの中で「健全な調整局面」を演出したといえる。
甘利発言を受けた15日の欧州市場でも一時88円30銭台にまで円高に振れる局面もあったが、結局88円40銭前後でアジア時間に戻ってきた。欧米市場関係者と話していても、ここから円買いを加速させる動きは殆ど見られない。特に、12月FOMC議事録で米国QE早期解除の可能性が浮上しており、想定金利差からもドル高に振れやすい地合いなので、円は買いにくい。
米国連邦債務上限を巡るオバマ大統領と議会共和党との対立は厳しさを増しており、リスクオフでドル買いのシナリオも考えられることは昨日、本欄に書いた。
ドル安のケースは、欧州債務危機後退を好感したユーロ買いの反対取引でドルが売られる場合であったが、昨日発表されたドイツの2012年第四四半期の経済成長率はマイナス0.5%を記録。2012年通年でもプラス0.7%と、2011年の3%から大幅に減速した。
欧州経済の緊縮モードが、ジワリ、ドイツ経済にも効きはじめたようだ。その結果、ユーロは対ドルで売られ、ユーロ安、ドル高に転じた。先週のECB理事会でのドラギ総裁の自信に満ちた楽観論発言も覆されてしまった。
さて、円売り、ドル買いポジションについては、手仕舞って出る人あれば、入る人もいる。入れ替わりプレーヤーが変わるので持続性のある円安相場となりつつある。まだ、この相場は若い。ドル円の次の一手はやはり円売りであろう。
さて、プラチナ価格と金価格の逆転現象が、昨日はプラチナ1700ドル、ゴールド1680ドルと逆転する場面もあったが、今朝のアジア時間では金1682ドル、プラチナ1674ドルと再逆転している。
総じて、金プラチナスプレッドは縮小傾向にあるが、プラチナ高が定着するには未だ時間がかかりそう。
いずれにせよ、この傾向は、世界的景気回復に薄日が差し始めたことを象徴する出来事ではある。
不景気に強い金、好景気で上がるプラチナ。通貨の顔も持つ金と、あくまでコモディティー(商品)であるプラチナの違いによる。
最大の生産者、アングロ・プラチナの新CEOが、思い切ったリストラで不採算鉱山を閉山。結果的に、年間世界生産量の7%近くが減少する計算になることが直接のキッカケであった。
筆者は、親会社のアングロ・アメリカン・グループCEOである米国人女性(40代)と会ったことがあるが、物腰は柔らかいが、リストラもクールに実施する感じのタイプであった。昔はアングロ・プラチナもアングロ・ゴールドも家庭的雰囲気の会社であったが、今や、米国流マネジメントが導入され、すっかりドライな社風になってしまった。
なお、いつも言っていることだが、プラチナ市場の流動性は少ない。昨日のアジア時間帯では50ドル近く急騰したが、ということは、逆に50ドル近く急落する可能性もあるわけだ。
なにせ、リーマンショック後、2200ドルから800ドルまで暴落した歴史がある。プラチナ投資には買って忘れることができるリスク耐性が求められる。(もの忘れが激しい人にむいているかも(笑)。)
今日、明日と札幌。土曜日は東証セミナー↓
http://www.tse.or.jp/learning/seminar/etf/jtb-0119.html (現在公開されていません)
こちらには、テレビ東京「ガイアの夜明け」取材カメラが入りますが、参加者は撮りませんから大丈夫。ステージ風景を撮るそうです。
なにせ、相場激動なので、株、ドル、プラチナと話題も多く、ガイアの夜明けでもスペイン国債とか日本国債とかを特に取り上げるようです。