豊島逸夫の手帖

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通貨大空位時代、通貨戦争、そして金急落

2013年4月19日

外国為替市場は米ドル、ユーロ、円という構造的赤字問題をかかえる主要3通貨の間の「弱さ比べ」を繰り返してきた。米ドルの基軸通貨としての座が揺らぎ、「通貨の王様」不在の「通貨大空位時代」となった。
元「通貨の王様」=金の返り咲きも語られ、金価格も高騰していた。

そこに新興国通貨も参戦して、グローバルな通貨安競争が勃発した。
この戦いは虚しい。勝利したからといって「通貨の王様」になれるわけではない。
それどころか、大量の通貨供給に比例して勝ち組の通貨価値の希薄化が進行する。

そこで再び、供給が限定され、価値が希薄化しない「無国籍通貨」=金が浮上した。
金購入はペーパーカレンシー(紙幣)への不信任投票となった。
BRICs諸国を始め、韓国、トルコ、メキシコ、タイなどの新興国は、外貨準備としてドル、ユーロのアロケーションを減らし、金を増やした。

しかし、現実的に、金が「通貨の王様」に復権するシナリオはあり得ない。金本位制は過去の遺物である。
結局、米ドルがユーロや円よりマシという消去法で再浮上している。
債務問題をかかえ緊縮を余儀なくされECBによる利下げも視野に入るユーロは短期的に乱高下するが潮流としては、対ドルで売られやすい状況が続く。
円は「通貨安競争、独り勝ち」への批判にさらされつつ、徐々に円安が進行する。
こうなると、ドル安トレンドの中で、代替通貨としての金が買われる、という金高騰の図式が崩れた。
金急落はドル高時代の到来を示唆している。

但し、外為市場の相対評価でドル高といえど、ドル不安は払しょくされない。
15日の金暴落ショックから徐々に市場も冷静さを取り戻し、改めて、ドル不安下のドル高の意味をかみしめている。

なお、本日の日経朝刊商品面に金市場見通しが掲載されています。
17日の日経CNBCセミナーにも多数のブログ読者が見えました。会場の構造上、直接話し出来なかったことが残念です。

2013年