豊島逸夫の手帖

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市場を揺らせた三つのサプライズ

2013年11月8日

8日発表の米雇用統計待ちの7日欧米市場を、サプライズが連続的にヒットした。
まず、ツイッタ―のIPO.新規株式公開価格26ドルを大幅に上回る45.10ドルが初値となり、一時50ドルを上回る場面もあり、NY証券取引所のフロアーは高揚感に包まれた。結局、初値を下回る44.90ドルで引けたので、市場は警戒モードである。バリュエーションからも正当化できる価格水準ではない。とはいえ、ダウ平均が152ドル安と大幅反落して、アップル・グーグル・フェイスブック・ヤフーなどのIT銘柄が軒並み下落する中での、初値を70%以上上回るツィッター株価の動きは、個人投資家の「アニマル・スピリッツ」を刺激したようだ。「当面は模様眺めだが、落ち着いたら買いたい」との声が多い。上場後急落し、その後急反発したフェイスブックIPOの前例が鮮明に記憶に残っているからであろう。
但し、外国通信社の調査でも、ツイッタ―・ユーザーの36%は「睡眠口座」状態という。業績も芳しいとはいえず、モメンタム相場が一巡した後は、バリュエーションが厳しく精査されよう。

二番目のサプライズは米国7-9月期のGDPが事前予測2.0%を大きく上回る2.8%と発表されたこと。
その時点で、外為市場では、急速にドル買い、円安(99円台)が進行した。
同時に、米国量的緩和縮小開始早まる、との観測も台頭した。
しかし、2.8%の内訳を見ると、消費が弱い。住宅・在庫積み増しの増加が寄与している。次期の在庫調整動向が気になるところだ。米国政府機能閉鎖の影響なども次期の数字で明らかになる。総じて、良い数字だが、マーケットは未だ「ちゃぶ台返し」に身構えている。

そして、三番目は、意表をついたECBの0.25%利下げ。このタイミングは、市場関係者も予想していなかったので、インパクトあるドラギ・マジックとなった。
物価上昇率が0.7%と、ECBが適正とする2%を大きく下回る状況が、この時点での利下げを決断させたわけだ。
しかし、寄合所帯ECBの常として、経済成長を重視し、輸出増を意識した通貨安政策と、ドイツ中心の伝統的に通貨安定を重んじる金融政策の間の溝は厳然として存在する。
外為市場では金利差要因からユーロが対ドル・対円で売り込まれ円高に振れた。中期的に見れば、地域共通金融政策の孕む構造的問題がユーロ不安を再燃させる可能性をあらためて感じる。
ドル円相場で見ると、米国発円安と欧州発円高に振り回された一日であった。
金価格もドルの乱高下に反応して、一時1300ドル割れかと思えば1326ドルの高値もあった。
短期弱気、長期強気、プラチナが面白い、とのスタンスに変わりなし。

2013年