豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 90円突破 官製円売りバブルの匂い
Page1337

90円突破 官製円売りバブルの匂い

2013年1月18日

甘利経済財政・再生相、石破自民党幹事長の相次ぐ「円安けん制」発言は円売りトレンドの調整を誘発した。自律調整ではなく、政治主導のスピード調整となった。ドル円相場も一時86円台にまで円高に振れた。
その値固め段階を終了させたのも甘利氏であった。17日、同氏が発言を修正。ドル円も88円台後半まで円安に転じた。
その後、ニューヨーク時間に入り、米住宅着工件数が2012年12月に事前予測を上回る95万4千戸(年率換算)と前月比12.1%増加を記録。12年通年の住宅着工件数も78万戸と、08年の90万5500戸以来の水準となった。16日同様に、米国経済指標好転によりドルが買われ、円安の後押しすることで、円売りが加速した。
17日の締めは、大台目標達成を意識した市場のモメンタム(勢い)がニューヨーク市場引けにかけて相場を牽引して90円を一時突破するエンディングとなった。
ここからは、目標達成感による利益確定買戻しをこなしつつ、90円台へ本格突入となろうが、まさに「海図なき航海」の様相だ。
21-22日の日銀金融政策決定会合や合意文書については報道も浸透し、相場の材料としては新鮮味に欠け陳腐化しつつある。
そのような市場環境では、要人発言が攪乱要因となり、相場が乱高下する展開が考えられる。「官製円売りバブル」醸成とでもいえようか。所得収支黒字などの基礎的円高構造も残る中で、市場の実態からは乖離した水準での投機筋による「空中戦」となる。
16日にはみんなの党渡辺代表の発言が、次期日銀総裁の参院同意の鍵を握る党の党首発言として外電で欧米市場に流れる一幕も。筆者のところにも、欧米トレーダーたちからの日本の政治情勢に関する問い合わせが急増している。
今後市場を動かす「要人発言」は野党側から飛び出るやもしれぬ。

かくして短期的乱高下は不可避だが、米国経済好転によるドル高も追い風となり、90円台での「海図なき航海」が続きそうだ。
ボラティリティー(価格変動性)は今までにも増して高まろう。
企業経営計画作成にあたっての想定為替レート算出も実に悩ましい局面ではあるが、この水準まで来ると、今後大きな円反騰局面があっても85円程度が円高の上限ではないか。
それ以上の円高に戻るケースがあるとすれば、現職閣僚失言・スキャンダルなどによる参院選での自民劣勢などのケースか。いずれにせよ、政治主導の円相場の色合いが強まりつつある。

さて、金とプラチナ価格だが、執筆時点(18日8時半)では、1685ドルで同値。抜きつ抜かれつの展開だ。1700ドルが上値の壁になっている。
それでも円安の進行が速いので円建て金価格は上昇中。
為替次第の金価格である。

なお、昨日書いた「ロシア中銀、円安誘導の通貨戦争を批判」の原稿が本日日経朝刊2面で紹介されています。

昨日は札幌で日経懇話会。北海道各地から100名もの企業経営者が集まる月例イベント。
北海道は金が売れる地でもあり、参加者も非常に熱心でした。やはり拓銀破たんなどの歴史を経ているから、ヘッジという概念が根付いているのでしょうか。
私は、講演前は何も食べない(血が胃に廻って頭に廻らなくなるから(笑)ので、講演後、会場の京王プラザホテル内で日経支社の方々と遅い昼食をとったのだが、また旬のタチ(タラの白子)が食べたいと我儘言ったら、昼休み中の和食部門からわざわざカフェに取り寄せてくれて感激!紅茶と旬のタチのコラボもいいもんですよ。ぷりぷりのムースみたいな食感だから。
帰路の札幌駅で再びぽっぽ饅頭買って、新千歳空港への車中でむしゃむしゃ~。スキーできなかったことが心残り。
ボーイング787運行停止の影響も受けず帰京できました。東京は「暖かい」!!!
明日の東証セミナーは200名定員満席とのこと。予定時間オーバーしたら、休憩時間中にロビーが使えれば、そこで質疑応答でも出来ればと思ってますが。行ってみないと分からない。

2013年