豊島逸夫の手帖

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9月波乱の予告篇

2013年8月22日

マーケットが焦れている。
今、世界の市場の最大の関心事である、米国量的緩和政策の段階的縮小がいつ始まるのか、という問題について、FRBの明確な意図が伝わらないからだ。
昨晩は、7月のFOMC(連邦市場公開委員会)の議事録が発表された後、NY市場は株も金も乱高下した。
FOMCの一部のメンバーは、量的緩和が長引くとインフレの合併症を招くとの懸念から、早期に、9月にも緩和縮小を開始すべしとの意見。
しかし、他の一部のメンバーは、足元の米国経済回復ペースがまだ定かではないので、量的緩和政策を継続して経済をサポートする必要あり、との意見。
FOMC内部で意見が割れているので、市場は次の一手が読めず、焦れているのだ。
特に、米国量的緩和が縮小・終了すると新興国にばら撒かれたドルが回収されるとの観測から、新興国経済が大揺れに揺れているので、マーケットは神経質にならざるを得ない。
しかし、FRBは、緩和を縮小するか否かは、今後の米国経済マクロ指標の出方次第、の一点張りだ。結局、次の米国雇用統計の良し悪しが、最終的判断材料となりそうな雲行きである。

とはいえ、昨晩から今日にかけて、外為市場と債券市場は明確な方向性を見せている。
量的緩和縮小ということは、FRBが米国債購入量を減らすことを意味するから、大量発行されている米国債の買い手も減り、債券市場の需給はだぶつくことになるので、債券価格は下がり、利回りは上昇する。昨晩も、米国債10年物の利回りは2.86%にまで急騰したまま、ほぼ張り付いた状況が続いた。
外為市場では、ドルの金利が上昇すればドル高となるので、円は売られ、FOMC議事録発表後、アジア時間までドル買いモードが続いている。ドル円は98円台を突破した。

金価格は、議事録発表後、1380ドルにまで接近したかと思えば、1360ドルを割り込む局面もあり、乱高下している。
ここから1400ドルを突破するためには、米国マクロ経済指標悪化→9月のFOMCで量的緩和継続、というシナリオが必要だろう。
インド・中国の記録的金買いも1200ドル台の時の話で、1350ドルを上回れば、鎮静化している。
いずれにせよ、欧米市場は未だ夏季休暇モードで取引は薄い。
9月相場入りまで、無理して動く必要はない。

2013年