豊島逸夫の手帖

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沈黙は金? FOMC声明文を読み解く

2013年8月1日

市場が最も身構えていた「9月に量的緩和縮小開始」の文言は盛り込まれなかった。FRBのマーケットへの配慮がうかがえる。英語で「緩和逓減」を意味するtaperという単語が、今や、世界のマーケットでトラウマになっている。そもそも、バーナンキFRB議長が5月22日の記者会見でtaperの具体的スケジュールを明示したことで株暴落が誘発されたからだ。その後のFRBサイドからのハト派的「火消し発言」により、株価は持ち直したが、依然、「9月にtaper開始」との「潜在的警戒感」は強く残る。そこで、今回、FOMCは、市場の混乱を避け、敢えて、taperについては何も言及しなかった。
市場側は戸惑ったが、FOMC声明文を精査して、当面、緩和継続を示唆する一つの単語に注目した。その言葉がmodest。高校英語で訳せば「謙虚な」という意味だが、FOMCが米国経済成長に関してmodestと表現すると、ネガティブな「弱い」というニュアンスになる。相も変わらずの「英文解釈相場」だが、前回のFOMC声明文では、modestの部分がmoderate(緩やかな)と表現されていたので、結果的には、「FRBが米国経済に慎重な見方」との市場のコンセンサスが生まれたわけだ。

そうなると、taper開始時期が9月説より12月説のほうが勢いを得る。高速度取引の時代に、3か月の違いが大きい。「量的緩和に変化なし」という前提でまだまだ短期的売買の機会は充分に残る。
但し、2日金曜日には米雇用統計発表というビッグ・イベントがあるので、31日の欧米市場では、大きな変化は見られなかった。
引け後まで乱高下が続いたのは、金市場くらいである。
金はインフレヘッジとして買われるので、FOMC声明文の中のインフレに関する記述には敏感に反応する。
今回は「FRBが目標とするインフレ率2%を下回る状況が続くことのリスク」が明文化されたので、金価格は一時売り込まれた。しかし、「中期的にはインフレ率が中期的目標水準まで戻るであろう」との一文も入っていたので、急速に買い戻され、結局、前日と変わらず1320ドル台で取引を終えた。
ことほどさように、FOMC声明文の英文解釈は、どっちにもとれる表現に満ちている。
結局は、次回9月のFOMCまでの失業率などのマクロ経済データを見極めたうえで、taper開始について最終結論を出すために、今回は、これまでとほぼ変わらぬ文面で無難に切り抜けたという印象が強い。

さて、今週は楽しい対談と超真面目なセミナーがあった。
まず、女優村井美樹さんとの対談。

1454a.jpgよくテレビ番組で見かける女性タレントだけど、勉強家で、金関係の対談ということで私の著書も読んで来てくれた。だから、対談も色々話題が出て、盛り上がった。
そして、昨日は、酷暑の大阪へ出張。東京証券取引所主催の年金基金向けセミナーを北浜の大阪証券取引所で行うという、珍しい設定。

1454b.jpgこれも時代の流れだね~それにしても、新大阪に着いたときは36度。クラッときたけど、セミナー後、外に出たら32度。「涼しい」と感じたよ。大阪出張恒例の天王寺「やまちゃん」のたこ焼きは、暑さでさすがにパスした(笑)。
ブログ読者の皆さんも参加できる次のオープンセミナーは9月1日渋谷で「草食投資隊セミナー」かな。投資信託の草食投資隊、セゾン投信の中野晴啓さんと二人で、ぶっちゃけ本音セッション!詳細は来週に発表。

2013年