豊島逸夫の手帖

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外貨投資の時代?

2013年2月7日

セミナーなどでドル円が76円の頃、「日本人のライフスタイルは衣食住全て外国製が増えているのに、資産だけは円が殆ど。このアンバランスは是正せねば。」と話してきて、実際に自分自身もドル買っていることを語ってきたけど、その頃の雰囲気としては、「円が50円になったら大損する」可能性を懸念して、結局、何もせずじまい。
その人たちが今になって、「これから外貨投資しても遅くないでしょうか」と恐る恐る尋ねてくる。
いつになっても変わらない投資家たちの行動だ。

ドル円が77円から一気に94円まで円安ドル高が進行したところで、外貨投資を始めるというのは、いかにも「遅い!」。
中期的には100円、110円と円安は進行するだろうが、これまでのような一直線にはゆかない。紆余曲折があろう。少なくとも、一度は大きな調整局面(円高ドル売り)があるだろう。それに耐えられるリスク耐性があるなら、今からでも始めてよいと思うけど。
でも、そういうリスク耐性を持っている人は少ない。
昨日は僅か24時間で92円から94円まで円安が進み、さすがに利益確定の円買いが入って93円半ばまで円高に振れた。
90円を超え、市場が「海図なき航海」に入ったところで、ボラティリティー(価格変動)が激しくなってきた。これは調整の前ぶれだと思う。円のミニ・売りクライマックスが近そう。
しかし、円高に振れる期間が極めて短いことも今回の特徴。投機筋が円売って、下がったところで、買い戻して、円高に振れたところで、再度売り攻勢をかけて、という「売買回転」が効いている証拠だ。円売り攻勢に新規参入組も増えているから、値動きは増幅される。短期的乱高下を繰り返しながら、円の水準が徐々に安くなってゆく。

貴金属市場では、プラチナが南ア鉱山会社の生産減少を囃し、急騰。プラチナ1735ドル、金1678ドルと値差が順ザヤで拡大中だ。
世界的景気に薄日がさしてきたことの象徴的現象だが、欧州経済が世界で未だ唯一雨模様(緊縮により今年はマイナス成長)であることがディーゼル車の需要減を連想させ、まだ油断できない。
足元では、ユーロ高に対する欧州諸国の懸念も高まり(欧州製品の国際競争力が弱体化する懸念)、ドラギECB総裁が、ECB理事会後の記者会見で、ユーロ高について、どのようなコメントするか、市場はウオッチしている。
欧州経済の回復が視野に入ってくれば、もっと安心してプラチナにもおカネ入れられるのだけど。当面のプラチナ高には短期売買で接するしかない。

2013年