豊島逸夫の手帖

Page1389 ソロス氏予言の「円安雪崩」来るか?

2013年4月8日

著名投資家ソロス氏が、CNBCのインタビューで黒田日銀の「大胆」な新金融政策に警鐘を発した。

発言内容は以下の通り。
「黒田日銀が引き起こした円安は雪崩となり、止められなくなるかもしれない。危険な政策だ。日本人の海外への資本逃避が始まる可能性がある。」
「米国と同規模の量的緩和を、米国の1/3のGDPの日本が実行すれば、その影響力は3倍に達する」
「日本は25年続いたデフレからの脱却を試みているが、同じ時期に、欧州は緊縮政策で、そのデフレの入り口に立つ。」

そして週明けのドル円相場は、ソロス氏の言う「円安雪崩」を連想させるような展開となり、いきなり98円台突破で始まった。
果たして、「円安の雪崩現象」は本当にあり得るのだろうか。

5日の米雇用統計後のドル円相場の動きを見ると、「雪崩」は極論にしても、円売りトレンドのマグニチュードの強さを感じざるを得ない。
日本時間5日午後9時半に発表された3月分の米雇用統計。
市場内の事前コメントでは「非農業部門雇用者増の良し悪しの境は20万人。それ以下なら悪いと判断され、FRB量的緩和終了観測は後退するので、ドル売り。万が一10万人を切るようであれば、円安にも水を差す」などと語られていた。

ところが蓋を開けてみれば、その「万が一」が起こり、雇用者増が前月比8万8000人と事前予測を大幅に下回った。
失業率は7.6%と前月から0.1ポイント低下したが、労働参加率減少(就職をあきらめ求職活動を止めた人たちが増加)が影響しており、素直に「雇用改善」とはいえない状況だ。

市場の反応は早かった。
発表直後、セオリーどおりドルが売られ、96円40銭から95円80銭まで瞬間的に円高に振れた。
ところが、次の瞬間にドル急反騰。96円50銭まで戻した。
その間、10分ほどの出来事。
いまや95円台まで円高が進行すると、「円売りトレード」に乗り遅れたマネーが、一斉にドル売りバンドワゴン(楽隊車)便乗に動く。
従来の「市況の法則」も当てはまらない。「異次元緩和」には「異次元円安」の様相だ。

結局、ニューヨーク外為市場は、97円60銭まで円安進行で引けた。そして、週明けはいきなり98円台である。

5日の本欄「2年後の円相場120円「回帰」も」に「まずは100円への道程が現実的に見えてきた感がする」と書いた。それが、「異次元円安」となると、市場力学による慣性の法則が働き、100円突破でも急停止できない状況さえ考えられる。
ソロス氏がいうところの「円安が止まらなくなる」現象である。
黒田日銀の「異次元金融緩和」の衝撃が引き起こした市場のモメンタム(勢い)により、105円まで円安が進行した後、さすがにこの材料も陳腐化して長い調整局面に入るシナリオもあり得るのではないか。

黒田日銀新総裁は、政策手段の「小出し」をせず、切り札のほぼ全てを一気にテーブル上に出した。そうなると、市場も「小出しの円安」ではなく、「一気に大台突破」の反応を見せても不思議はない。しかるのちに、新金融政策の実施段階で詳細が吟味され、アベノミクス・ハネムーンの終焉とともに、市場のユーフォリア(高揚感)から覚醒するにつれ、円安も調整局面に入る、という見立てだ。

なお、波乱要因としては、北朝鮮発の地政学的リスクと、日本の債券市場リスクが考えられる。特に後者は欧米ヘッジファンドによる「悪い円売り」を誘発しかねないので要注意だ。前者については、避難通貨として円が買われるという観測もある。
しかし、地理的にリスクの震源地に近い国の通貨に世界のマネーが「逃避」するとも考えにくい。
但し、その時のマーケット内部に円売りポジションが大量に蓄積していると、円買戻しの要因として「利用」されることはありえよう。
なお、金価格は米雇用悪化でFRB出口模索観測が後退したことで、1580ドルまで急反発。あいかわらず乱高下するが、基本的流れは、米雇用統計悪化で上昇傾向が復活した感じだ。
円建て金価格は強い。殆ど為替次第。(だから、為替について延々書いているわけだが。)

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