豊島逸夫の手帖

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再新興国・日本の首相 NY取引所で演説の効果

2013年9月26日

安部首相がニューヨーク証券取引所を訪問して、米国人投資家向けに演説。更に、クロージング・ベルを鳴らした。
アベノミクスの入り口に立つ首相としては、オープニング・ベルのほうが、盛り上がったかもしれない。先週あの取引所フロアーに立った時も、寄り付きの期待感が満ちて、独特の高揚感が場を支配していた。
25日のNY株価は5日連続の下げに終わったので、クロージング・ベルが流れるフロアーのムードも湿りがちだったろう。
しかし、安倍首相の訪問は、タイミングには恵まれた。
新興国から逃げ出してきたマネーと米国企業の潤沢な手元流動性が、「次に草鞋を脱ぐ宿」を探して徘徊している。
米国株には、足元で財政不安がつきまとう。サプライズの緩和縮小延期も、1週間経った今、「結果オーライ」だった、とFOMCの決断が見直されている。
そこで浮上しているのが欧州株だ。メルケル首相も選挙に勝ち、EU圏の経済成長率もプラスに転じた。しかし、欧州債務不安に関しては先送りを重ね、根源的解決への道はまだ遠い。従って、なかなか手を出しにくいのだが、割安感に着目して欧州株のアロケーションを増やす傾向も見られる。
このようなグローバル投資環境の中では、日本株が、機関投資家にとっては、最もポジティブなシナリオを描きやすい、という声を先週のNY証券取引所でも聞いた。アベノミクスの政策をdeliver(実現)出来るか否かに疑問符は残るが、ねじれ国会も解消され、「決められない」米国・欧州の株式より政治的安心感がある。
日本株の位置づけも、「再新興国=re-emerging」という表現が象徴的だった。もう一度、新出発点から出直す国、という期待感が込められている。

総じて、5月に同取引所を訪問したときより、アベノミクスに対する「抑制が効いた楽観論」が感じられた。
そのような地合いの中で、安倍首相が取引所でのスピーチをBuy my Abenomics(私のアベノミクスを買ってくれ)と締めたのは、米国人投資家のココロには響いたと思う。
日本株を買え、という直接的表現では、一国の首相としての品格が問われかねない。しかし、アベノミクスをbuyしてくれ、という表現であれば、buy=購入する、ではなく、納得して支持する、という意味になる。(ちなみに、sellという単語が、オバマ大統領は、シリア軍事介入案を、議会・国民にsellできなかった、という文脈で使われた。)

5月9日付け本コラム「NYで流布されるアベノミクス情報を危うさ」に書いたように、現地で極端な議論が報道されがちだ。そこで、みずから首相が取引の現場で語ることは、いずれボディーブローのごとくジワリ効果が出てくると思う。

なお、9月30日午後8時からNY収録の金特番が日経CNBCで生放送されます。

2013年