2013年9月3日
先週号の日経ヴェリタスの首題の記事に出ましたので、ここに再録します。(澤上篤人さん、高田創さん、中空麻奈さんの4人です。)
「情報に溺れない系統だった理論得る」豊島逸夫
私の「原点」は迷わずこの一冊―国際経済学や大恐慌研究の大家、米チャールズ・キンドルバーガーによる「International Economics」を挙げます。出会いは1970年、一橋大学のゼミの教材でした。日本橋の丸善まで原書を買いに行きましたよ。初任給4万円の時代に確か2000円。高かった。
貿易理論や為替調整メカニズムなど国境をまたぐ経済活動に関する、経済学の理論的基盤、全てが詰まっている。例えば、環太平洋経済連携協定(TPP)やユーロ危機などの今日的課題もこの一冊に立ち返ると本質が見えてくる。
世界経済のパイは、国が比較優位を持つ産業に集中し、自由貿易のメリットを生かせば最大になるのに、なぜその道が困難なのか?いかに経済合理性から離れ政治が介入しているか?
キンドルバーガーは後年、大恐慌の研究でも有名ですが、当時は国際経済学の気鋭の研究者。この本は教科書だから客観的で淡々とした筆致。「立ち返る」目的にはそれが心地いい。
もちろん理論は理論。これを読んでも現実のトレーディングではもうかりませんよ。ウォートン(米ペンシルベニア大学のビジネススクール)で学んだモダンポートフォリオ理論なんかもそうだけど、理論は机上の美しい前提条件の枠内だけで成り立つ。トレーディングの現場で売った買ったの判断にはむしろ邪魔。英語で「Traders have only one hand」(トレーダーには手が一本しかない)と言いますが、トレーダーはあれこれ考えず単純じゃないと。要はリスク依存というか、アドレナリン勝負の世界だから。
マーケット人生40年、その後、「マーケット・アナリスト」を名乗るようになった今こそよく分かります。本を読んでも勝てない。でもトレーディングばかりじゃ、どこかむなしいというか、バカになる。自分のゴールポストがどこにあるか確認し、フィールドで右往左往しないためにも読書は必要です。
考えに詰まり、思考を整理したい時、この本を手にします。「初代」はもうボロボロ。今めくるのは数年前に買った二代目。しばしソファに横たわり、10ページ、20ページと読むにつれ視界が開けてくる。「確かこの件に関する理論が〇ページ辺りにあったな」と」読むと、日々の断片的な情報の海に溺れず、自分の考えに自信が持てます。
「今を読む本」で挙げたいのは、フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)の「リーン・イン」。私は常々「男の嫉妬が日本経済の足を引っ張る」と思っていたから。安倍政権も成長戦略に位置づけているけど、働く女性の問題はまさに日本経済の問題ですよ。ロンドンでもスイスでも東京でも・・・・男の嫉妬で潰される優秀な女性を何人見てきたことか。「ガラスの天井」というけど、その前に足を引っ張り降ろされる。
私のアシスタントは皆女性でした。トレーダーとして優秀だったから。女性のほうが売り、買いの判断を迷いませんね。あのバフェットだって言ってるそうじゃないですか、「自分が成功を収めたのは人類の半分と競争せずにすんでラッキーだったから」って。
以上引用終わり
こう語ったわけですが、実は、最も頻繁に見る書は知り合いからもらった猫の写真集笑!猫好きなので、殺伐としたマーケットの世界と接していると、なんとも猫に癒されるのですね~~今は亡き愛猫「ミミ」は、NY時間になって相場が荒れると、私のカラダがアドレナリンを発し、それに反応してミャァミャァ鳴いたものです。だから、リスクに敏感な猫なんていってました。そのミミが死んだときには、人生こんなに泣いたのは初めてというくらい泣いて、その日の午後にセミナーがあって、泣きはらした目を隠すために、たまたまあったゴルフ用のサングラスして登壇したので、相当怪しい講師と見られたでしょうね。。。(笑)。