豊島逸夫の手帖

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中国金輸入通関統計急増のカラクリ

2013年12月12日

筆者は、香港から中国への金輸出量(中国の輸入量)のオモテの数字(香港側の通関統計)が異常に膨らんでおり、これは裁定取引による水増し分が200トン前後含まれることは現地では公然のことと書いたり語ったりしてきた。
その実態が、今朝の日経朝刊国際面「違法マネー中国最流入」に詳しく書かれている。米バンクオブアメリカによる話として「偽輸出に利用されるのは金や半導体など高価な割に輸送費が安く、価格操作も容易な商品」というコメントと、中国本土と香港間の金利・為替差を利用し、裁定取引を行っていると報じられているのだ。`

フィナンシャルタイムズも、この件について報じている。日経は、中国からの輸出としているが、FTは中国の輸入としている。これはFTのほうが正しい。
中国本土の本社が香港支社から金輸入のためにL/C(信用状)を発行して、香港支社は、そのL/Cを担保に香港の銀行からドル建て融資を受ける。
一方、中国本土の本社は同額の人民元を預金することで3.5%程度の金利を稼げる。
香港支社が支払うドル金利のほうが安いから、裁定取引で儲かる仕組みだ。
金の現物が香港から中国本土に移転する際に、通関統計に記録されるが、すぐにエンドユーザーあるいは投資家に購入されず、「業界在庫」として蓄積してゆく。或いは、別の非公式ルートで香港に戻る、或いは、第三国へ流れるケースもあり得る。
基本的に中国の金需要は旺盛だが、このような「仮需」も含まれるのだ。

2013年