豊島逸夫の手帖

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政治家口先介入をこなして円安進行

2013年1月17日

ロシア中銀ウリュカエフ第一副総裁が日本を名指しで「円を安くしている。他国も追随するかもしれない。世界の主要国は日本に対抗し、国際競争力を強化するために自国通貨切り下げ政策を用いる通貨戦争の瀬戸際にある。」と批判した。
また、ユーロ圏財務相会合ユンケル議長は「ユーロは危険なほど高い」と発言し、ユーロ高に懸念を示している。
本欄1月11日付け「一人勝ちの通貨安競争、日本が抱える宿題」にて詳述したことが顕在化してきた。
15日の甘利経済財務相「過度な円安は国民生活にマイナス」発言、そして16日の石破自民党幹事長の「円安で困る企業も出てくる」発言など、一連の政権幹部による「口先介入」は、日本一人勝ちに対する批判を意識したコメントなのであろうか。
ドル円は、16日の欧米時間帯で一時87円80銭を割り込むまで円が反騰したが、ニューヨーク市場は88円40銭まで戻して引けた。
「口先介入」で円高に振れても、持続しない。昨年までとは対照的なトレンドの変化だ。要は円安モードに入っている。
入れかわり立ちかわり新規プレーヤーが円売りのバンドワゴン(おみこし)に乗ってくる。
結局のところ、政治家が口先介入しても、ドル円相場の価格を決めるのはマーケットなのだ。

16日も米国経済マクロ・データがドルを支えた。
2012年12月の米鉱工業生産指数が二ヶ月連続で上昇。特に鉱工業生産の約75%を占める製造業の生産指数が前月1.3%増に続き0.8%と上昇したことが注目された。GDPの12%を占める項目だけに、米経済回復基調を裏付けるデータといえる。
更に地区連銀経済報告(ベージュブック)では、各地域の「穏やかな回復」、特に住宅と自動車部門の改善が報告された。
対円でドルが日本の政治家の口先介入で売られても、87円80銭で下げ止まり、88円台を回復した背景は、やはりファンダメンタルズ、即ち、米国経済が日欧経済に先駆け一足早く好転しつつあることにある。
但し、一連の「想定外」の閣僚発言により、今後の相場展開シナリオも影響を受けそうだ。

21-22日の日銀金融政策決定会合で当面材料が出尽くし「噂で円売り、ニュースで円買い戻し」の可能性があったのだが、政府と日銀の「公武合体」合意文書発表前に、円安のスピード調整が始まってしまった。
そこで、来週発表されるであろうアコード(合意文書)の内容次第では、円安第二ラウンドに入るシナリオも浮上してきたのだ。或いは次期日銀総裁に関する首相発言などが、更なる円安示唆として材料視されるかもしれない。
アベ・ハネムーンは未だ続きそうなので、ドル円のレンジとしては高値が95円程度まで考えられる。しかし、相場がセンチメント(期待感が醸成する雰囲気)に基づく投機主導なので、仮に95円をつけても瞬間タッチと見る。いずれ、ドル円の需給均衡点に向けて収れんしてゆく模索の過程に入るであろう。

11日に発表された2012年11月の経常収支に関して、8475億ドルの貿易収支赤字ばかりが注目を集め、「経常収支10ヶ月ぶりの赤字、赤字幅は過去2番目」と囃された。
しかし、冷静に見れば、所得収支(外国証券や海外子会社からの利子・配当収入)も8,915億ドルと前年同期比でマイナス4.9%とはいえ、貿易収支赤字を相殺する規模にあるわけだ。
ファンダメンタルズの変化は現在の円安進行速度に追いついていない。基礎的円高構造も依然残っている。
85-90円のレンジにドル円需給均衡点があるのではないか。
また、そのレンジで落ち着けば、「為替操作国」の誹りを受けることもあるまい。

さて、今朝は札幌のホテルで本稿執筆。
日経懇話会という会員組織での講演。実は、懇意にしている札幌の貴金属店(スキー板まで預かってもらってる)に、読者数名から、札幌のセミナーに参加したいとの問い合わせがあったそうですが、そういうわけで、会員限定なのです。
それにしても寒い!!!!
地元の人たちも「今年は特に寒い」と言ってます。昼でもマイナス3度。スキーの私のホームグラウンド、ガーラ湯沢の山頂と同じだ・・・。スキーならスキーウエア―着るけど、講演だからスーツ。
街中の除雪作業も大変みたい。特に2月の雪まつりに向けて、大作業のようです。
でも、これだけ寒いと、まずタチ(鱈の白子)がめちゃうま!
東京ではありえない新鮮さ。酒飲まないけど、お茶でも食べられる(笑)。プリプリ食感がたまらない。鮨屋でおかわりしました。
そして、札幌近郊の藻岩山スキー場でも、パウダースノーが楽しめる。通勤前に一すべりなんて、うらやましいなぁ・・・。
そして、昨日は札幌駅について、まず向かったのがホテルではなく、構内のポッポ饅頭。出来立てホカホカで、黒糖あんこの甘さが沁みる。これ食べると、札幌に来たな~と実感が湧くのだ。
本当は2-3日滞在してニセコでスキーなど、下心を持っていたのだけど、もろもろ、明後日は東証セミナーもあるし、諦めた(涙)。
今日も講演後、回転鮨で、またタチ食べて帰ろう!
今週は、北近江の鴨鍋、京都の祇園、そして札幌と、食べる方は恵まれた生活です。
いずれ写真貼ってお見せしますね。

2013年