2013年1月25日
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席中の著名投資家ジョージ・ソロス氏が、米国経済テレビ局のインタビューで、円安についても言及した。
「通貨戦争が潜在的な最大のリスクだ。ドイツは緊縮の道を歩んでいるが、他の主要国は量的緩和の道を選択している。ユーロ圏は量的緩和せず、ユーロ高の結果、ドイツ経済はリセッションの可能性がある。
日本も長年にわたるデフレからの脱却のため、遂に量的緩和政策に乗り出し、その結果、円安が生じている。安倍政権がデフレ脱却を実現させるため強い決意で臨んでいる。日本は明確な結果を出さねばならない。」
インタビュアーの「通貨戦争は?円安は続くか」とのたたみかけるような質問に対して、日本を名指しで非難することは避けたものの、「currency war = 通貨戦争」のリスクに言及した。
既に、ドイツからは、ワイドマン独連銀総裁が、日銀を政府の圧力に屈したとの批判論が伝わってくる。「外国為替レートの政治化」に強い懸念を示しているのだ。
更に、やはりダボスではメルケル首相も日本批判を展開した。
「I must admit I am a little concerned about Japan right now. (日本については若干懸念していると言わねばならない。)」と慎重ながらも「中銀の独立性が侵害される」ことに言及している。
ドイツはワイマール時代にハイパーインフレを経験しているので、中銀の役割について、経済成長より物価安定を優先させる伝統が強く残る。最も保守的な中央銀行といえよう。
ワイドマン発言に対しては、24日のフィナンシャル・タイムズ紙で、甘利経済再生相がインタビューに応じる形で早速反論している。
「ドイツはユーロ圏の固定相場制の恩恵を輸出面で最も享受した国だ。He's not in a position to criticize. (彼(ワイドマン氏)は批判する立場にはない。)市場は、過度の円高を修正する過程にある。
We aren't guiding it, we aren't doing anything. (我々は、導いているわけでもなく、何をするわけでもない。)」と述べている。
国際社会では四面楚歌の円独歩安現象であるが、甘利相の如く、公の場で毅然と主張すべきは主張すべきであろう。(「何をするわけでもない」とまでは言い難く、政治家主導の円安と言われると、否定できない面もあるが。)
特に2月15-16日に開催されるG20に於いて、アベノミクスが話題になることは不可避の様相ゆえ、英語力を駆使した明確な説明を期待したい。
英語のディベート(議論)は、日本人が不得意とするところであるが、非伝統的な政策でデフレ脱却を目指すについては、国際社会の理解も欠かせない。
中国の外相が流暢な英語で海外記者団と直接わたりあっているのを見るたびに歯がゆい思いである。