豊島逸夫の手帖

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今年のノーベル経済学者、NY株バブルへ警鐘

2013年12月4日

最近の円相場の動きには昼の顔と夜の顔がある。日中のアジア時間帯では株価とにらめっこ。夜の米国時間帯になると、米国経済要因によるドル高ドル安の影響を強く受ける。
3日も一時は103円前半まで円安が加速したが、ニューヨーク時間では、ファンドによる円キャリーの巻き戻しが加速して、一時は102円まで円高に振れた。クリスマス休暇へのカウントダウンが始まると、ポジション決済の動きが強まる。米雇用統計前の身辺整理ともいえる。
一日終わってみれば、当面の円売りクライマックスとなったカタチになった。
中期的に見れば、円売りの流れの「健全な調整局面」といえる。
この調整なかりせば、一気に円安が進行して、その反動の円高も激しいバブル型の相場になったであろう。

一方、日本株を見る欧米機関投資家の目は厳しさを増している。成長戦略の遅れにいらだち、「3本の矢ではなく藁だ」などと揶揄されている。
とはいえ、米国人個人投資家の日本株投資は着々と裾野が拡大している。日本株ETFで最も売れているウィズダムツリー(為替ヘッジつき)のAUM(運用残高)は円換算で1兆円の大台を突破している。同社は、新たに5本の日本関連ETFを立ち上げると言う。

その日本株へのマネーシフトを促しているのが、ニューヨーク株バブル説だ。著名投資家カール・アイカーン氏に続き、今年のノーベル経済学者シラー・エール大学教授も「米国株ブームには心配している。私も株投資をしているが、エネルギー・健康分野ならバリュエーション的にまだ買えるものの、ハイテク・金融株は乱高下モードに入っている。バブルになりやすい。」と語る。
筆者も今年5月の株暴落の前週にエール大学のシラー教授研究室を訪ね対談したのだが、その時点で既に、ニューヨーク株が過熱気味であることを自身が開発したCAPEという指標を示しつつ警告を発していた。結果的には5.23暴落の可能性に警鐘を発していたことになる。
米国株に高値警戒感が強まると、欧州株や日本株に運用がリアロケーション(再配分)される。日本株ETFへのコンスタントなマネー流入のひとつの背景であろう。
2013年末となり、あらためて突出した日本株のパフォーマンスが話題にのぼることが多くなってきた。
3本の藁といわれようと、黒田日銀の追加バズーカを見込み、欧米マネーの日本株へのマネーシフトは続きそうだ。


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コネチカット州ニューヘイブンのエール大学、シラー教授研究室にて

2013年