豊島逸夫の手帖

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緩和縮小の呪縛から脱したか?

2013年6月26日

米住宅指標は明確な改善。4月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は主要20都市の値動きを示す指数が前年同期比で12.2%上昇。新築一戸建て住宅販売件数は、年率換算で47万6000戸と前月改定値から2.1%増と2008年7月以来の水準回復。
耐久財受注も市場予測を上回り、前月改定値から3.6%増。
米リッチモンド地区連銀製造業景況指数は、3ヶ月ぶりにプラス値(10ポイント上昇)を回復。
6月の米消費者信頼感指数は81.4と、これも2008年1月以来の高水準。
これだけ米国マクロ経済指標好転が並ぶと、さすがに市場も素直になった。

これまでは、指標が良ければ、緩和縮小を連想し、売りに走っていたニューヨーク株式市場が、オーソドックスに改善を好感して買いに転じたのだ。
「良いニュースは悪いニュース」から、「良いニュースは良いニュース」との本来の解釈に戻ったようだ。
中国短期金融市場の混乱も当局が資金供給を示唆したことで収束に向かう流れになっている。
半信半疑ながらも、市場は好感の反応だ。

総じて「ノーマル=通常」な市場の動きを、「珍しく」感じてしまうのは、高ボラティリティーの記憶が未だ鮮明に残るからであろう。
ここは、企業業績が素直に評価される相場に転化する兆しと見たい。
なお、米国10年債の利回りは2.6%台へ続伸した。
この現象も、景況感好転による「良い」金利上昇との解釈が増えてきた。これまでは、最大の米国債買い手であるFRBの購入縮小の要因ばかりが注目されたので、債券市場も素直になる兆しが見られる。
米国が好転、中国は小康状態、となれば、日本株はアベノミクスの外的リスク軽減により、自然なカタチで浮上する。
残る欧州、特にイタリアがまだくすぶっているが、総じて、欧州債務不安は緩やかな後退傾向にある。恐怖指数と呼ばれるVIXも18台と8%以上低下してきた。
世界的に未だ楽観できる状況ではないが、市場が暴れまくった6月から、冷静さを取り戻す7月を迎える兆候に、マーケットは安堵相場の様相である。

金に関しては、1270ドル台まで続落。一方、ドル円は98円で円安。国内は買い一色である。日本人特有の安値圏でのバーゲンハンター買いは、長期保有を前提とすれば、正解だと思う。なぜ?私が買っているから(笑)。
富裕層のまとめ買いも目立つ。筆者は時間軸で分散する買いを薦めているのだが、シニア層には、「じっくりコツコツ買っている時間的余裕がない。残された時間は少ないのだ」といってまとめ買いする人も多いのだ。
実は、先週、業界のベテランが74歳で急逝した。数多い社員全員の名前とそれぞれのエピソードを覚えていて、会うと必ず「お父さんの病気はどうかい」とか声かける。だから、社員の信頼も絶大だった。前日まで元気に普通に働いていたので、全員驚いた。なにがあるか分からない。そんな話を聞いていると、まとめ買いも分かるような気もする。

2013年