豊島逸夫の手帖

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金1300ドル台回復

2013年7月23日

参院選後の国際市場で最初に大きく動いたのが金市場であった。月曜朝一でいきなり当面の上値抵抗線であった1300ドルの大台を突破。その後、欧州時間帯でも上げ続け1330ドル台で推移している。
別に日本の総選挙が要因ではない。
俯瞰すると、そもそも今回の暴落のキッカケはバーナンキFRB議長の「緩和早期縮小発言」であった。しかし、その影響はショック波となりマーケットを直撃。そのあまりのインパクトの強さに警戒感をいだいた同議長が、一転、緩和継続を強調する発言に転じたことが、QE依存症の金市場に(当面の)買い安心感をもたらした。
とはいえ、底流として米国経済の緩やかな回復に伴う緩和縮小路線に変わりはない。その時期が9月か12月か2014年初か、ここが、住宅・雇用関連マクロ経済指標の出方次第だが、意見が分かれるところなのだ。

いずれにせよ、短期売買の投機筋にとっては、9月或いは12月まで「執行猶予」ありと思えば、まだひと暴れもふた暴れもできる。売り方はまず買い戻して、ポジションをスクエアにして、再び、売り攻勢をかけることも可能だ。買い方も増えてきてはいるが、1350ドルに接近したあたりで新規に買いを入れるのは、ドル金利高、ドル高の中期的底流(足元はドル安だが)と新興国経済変調という二つに逆風を考えると、かなりの冒険ではあろう。

中国の買いも現地の市場関係者は、1300ドルになると、顧客の買いもかなり減速すると口を揃える。上海黄金交易所のプレミアムが高いのは、テールバーという中国仕様の金地金の製造が間に合わないからで、世界全体で中国の買いにより金の供給不足に陥っているわけではない。香港から中国本土への金輸出は急増しているのも、相当量の仮需があるからだ。アービトラージ(裁定取引)で金地金が移動している部分のことである。現地を知らずに、数字だけ追っていると、誇張されたイメージだけが醸成されてしまいがちだ。

次の焦点は、米国雇用統計。
ここで、またぞろ、緩和縮小時期についての観測が変化することが考えられる。新規雇用が20万人近くあれば、いよいよ緩和縮小ということになろうし、悪い数字ならば、「執行猶予」が延びたということで、短期的に買い直される局面となろう。
いずれにしても、近い将来、緩和縮小が確認された時点で、1200ドル割れの大きな下げが考えられる。しかし、長期的には1200ドル台が底値圏との見方に変わりはない。

なお、今日午後3時35分からテレビ東京で生出演します。
http://www.tv-tokyo.co.jp/mplus/

2013年