豊島逸夫の手帖

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株安、債券安、円安、商品安で反応した市場

2013年6月20日

6月19日のバーナンキ記者会見と5月22日の同氏議会証言後の議員との質疑応答を比較すると、緩和縮小・終了につき、より明確な「シナリオ」を示したことが鮮明だ。
5月22日には「マクロ経済環境次第だが、in the next few meeting 今後数回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で資産購入もありうる」と発言した。筆者は「これまで数あるバーナンキ証言を中継で見てきたが、超ハト派と言われた同氏があれほど「QE縮小」について具体的かつ詳細に語るシーンは初めてである」と書いた。
そして6月19日。
これはシナリオであり、政策決定ではない、と断わったうえで「later this year 今年後半には資産購入ペースを減速。慎重に段階的に来年前半には資産購入減額を継続。そして来年半ば頃に終了。」と具体的緩和縮小スケジュールについて語った。
総じて、事前予測通りの緩和縮小シナリオだが、発表内容がより具体的であったので、市場は強く反応した。
しかも、経済見通しの下振れリスクについてdiminished減ったというこれまでには使われなかった単語で明確に表現したので、FRBが楽観的である印象を市場に与えた。緩和縮小の前提条件である米国経済の持続的回復について強い自信を見せたわけだ。

市場の反応だが、まず債券売りがマーケットの連鎖反応を引き起こした。米国10年債の利回りは2.1%台から2.3%台まで急騰。そしてニューヨーク株は大引け15分前から下げが加速。ダウは206ドル安で引けた。外為市場ではドル・インデックスが1時間ほどで80.70前後から81.50台まで急騰。円は95円30銭程度から乱高下を繰り返しつつ相場水準が96円50銭前後と円安に振れた。(一時は97円台をつけている。)
そして金は1375ドルから1340ドル台まで急落した。
総じて、米国量的緩和で過剰流動性の恩恵により買われた資産の売却傾向が加速している。

ドクター・バーナンキに点滴を外され、退院予定まで説明された入院患者が、果たして外気に触れて独り歩きできるのか、不安心理が募るという状況だ。
そこで患者の懸念を鎮めるために、「もしぶり返す兆候が出れば、点滴(資産購入)増量も考える」とも語っている。
なお、FOMCの決定は10対2の多数決であった。二人の反対者の名前も公表されている。ハト派のジョージ・カンサス連銀総裁とタカ派のブラード・セントルイス連銀総裁である。ハト派とタカ派の両サイドから反対意見が明記されたことは、若干の不安感を残す。
なお、黒田日銀の異次元緩和については、「市場のボラティリティーを誘発している」ことは認めつつ、「黒田総裁を支持する」と明言した。

今後の市場の動きだが、QE依存症の市場には辛いバーナンキ発言だが、米国経済好転の結果としての緩和縮小ゆえ、長期的には良い材料である。
いずれはQEというクスリを使わず経済活動が出来る状況になることを前提とすれば、ニューヨーク株も「噂で買ってニュースで売る」式の短期変動と考えられる。長期金利上昇も経済健全化の証とも読める。そして、アベノミクス相場に関しては、バーナンキ「応援発言」を含め、円安の結果が中期的な復活のキッカケになりうるインパクトを感じた。

なお、プラチナの下げが目立つ。
金はFOMC直後から急落したので、明らかなFOMCの結果としての下げなのだが、プラチナはNY時間ほぼ一貫して1440ドル台から1410ドル台まで下げ続けた。
南ア鉱山不安の供給サイドの上げ要因が陳腐化すると、やはり、欧州・中国経済が抱合する基礎的不安が需要減要因としてジワリと効く。但し、2014年には欧州・中国経済も米国に引っ張られるカタチで好転することを前提とすれば、円高で円建てプラチナ価格には長期的に見ると割安感を感じる。

2013年