2013年5月28日
今回の投機筋、先物先導による株急落に対する日本人個人投資家の反応はさまざまだが、投資最前線のセミナーで聴衆と対話していると、やはり「底なしへの恐怖、不安」が目立つ。
日経平均先物の短期的変動に翻弄され右往左往するタイプが多い。その結果、プロの投機筋には「おいしい」市場となっている。
その理由は二つある。
―長期投資家の層が薄い。投機筋の売り攻勢に対し、安値圏で長期保有目的で買い向かう動きが未だ弱い。相場の下支え役が力不足なので、容易に売り崩せる。これは、証券業界が長らく、3か月ごとの「キャンペーン」で「全社戦略商品」を売りまくり、3か月後には、新たな商品をキャンペーン対象商品として支店にハッパをかける、という慣行を繰り返してきたことで、「投資信託」でも少しでも上がれば、すぐ売却してしまうような売買回転が当たり前になってしまった事情もある。また、それに対し、個人投資家も「父の代からのお付き合いの証券会社だから」と、唯々諾々と「シェフのおまかせ」に従い運用してきたという、金融リテラシー不足も指摘されねばならぬ。
次に、
―売り、または買い、の一方向に投資家の注文が偏りがちで、one-way market(一方通行市場)となりやすい。
プロの間では、日本人のherd instinct(動物的本能とでも訳せようか)と呼ばれる現象だ。ネズミの大群のように、ドッと一方向に動くので、結果として、日本市場だけが割高になり、いわゆるジャパン・プレミアムとなりやすい。或いは逆にジャパン・ディスカウントになる局面もある。この国際市場との値差は外資系ディーラーにとって一番「おいしい」状況だ。例えば、割高の日本市場で売り、同時に割安の国際市場で買うという「裁定取引」で瞬間的に値差を得ることが出来るからだ。
この二つの理由の根底に流れるのは日本人投資家のリスク耐性の弱さである。
エール大学シラー教授のいう「アニマル・スピリッツ」が米国人、中国人などは強いのだが、相対的に日本人には薄いことはたしかだ。
これは民族のDNAゆえ、いかんともしがたい。
しかし、「よそさんの動き」ばかりを気にして、皆が買っているときに自分も買う、という現象は、金融知識の欠如による「未知」へ「不安」が引き起こす面が強い。
こういう株急落の局面こそ、基本に立ち返り、もう一度、投資の基礎を学ぶ時期であろう。
米国著名投資家バフェット氏の例などは、教科書的ケース・スタディーとして参考になると思う。
株下落を「投機筋の売り」で片付けるのは簡単だが、真の理由は、日本人のココロの中にある。