豊島逸夫の手帖

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ヘッジファンドの背中を押す「アベ信任」

2013年7月22日

自民党大勝は、欧米ヘッジファンドの「日本株買いモメンタム」を加速して、リアル・マネーの日本株買いを「調査」の段階から「実行」の段階へ進めるだろう。
5月にウオール街で会った市場関係者たちから、昨晩筆者に送られてきた様々なメールの文面から感じることだ。
「安倍政権右傾化=チャイナ・リスク」「構造改革実施の難しさ」「JGB日本国債の長期的脆弱性」など慎重な見方は多い。
しかし、これらのリスクがただちに顕在化するわけではない。
まずは、「頻繁に首相が変わる国」が「安定化」に向かう流れが確認できたことで、日本株に対する安心感が醸成されつつあることが重要だ。Stability(安定化)は、日本株投資へ社内コンセンサスをまとめる際に、極めて重要視される要素だ。

更に、日本への期待感の水準が決して高くはない。Low expectation(期待のハードルが低い)ことも感じる。
彼らが、成長戦略の結果を短期的に期待しているわけでもなく、チャイナ・リスクが年内に解消されると期待しているわけでもない。
ただ、国会のネジレ現象が解消され、多くの日本国民が、アベノミクス実現へ信任票を投じたことで、彼らの期待感はかなり満たされつつあるのだ。
日本国民は本当にアベノミクス実現に向けて動き始めるのか、との疑念に対して、その「本気度」が選挙結果で伝わったことはたしかだ。

更に、日本が参院選一色の間にグローバルな投資環境は日本株有利な方向に動いていることも重要だ。
高値更新を続けるNY株だが、高値警戒感に加え、マクロ経済指標悪化が緩和縮小を遅らせるゆえ買い材料とされるという特殊な解釈が一般化しつつあることは、投資家心理として必ずしも「心地良い」ものではない。
マイナス成長が続く欧州株は買いにくい。
中国は、経済成長より綱紀粛正を優先させ、経済減速を容認の姿勢が鮮明だ。新興国株は、売りモードにある。
このような世界的投資環境では、アベノミクスが信認された日本の株式が相対的に最もポジティブなシナリオが描けるわけだ。
それでも、まずは業績を睨みつつ米国株へのマネー回帰。その次の選択肢が日本株。
参院選の結果は、一位と二位の差を縮めた。

なお、月曜朝一で金価格は1300ドル突破。1310ドル台をつけている。取引の薄い時間帯を狙った仕掛けだが、当面の上値抵抗線は突破となった。相当空売りが溜まっていたので、買戻しも続いている。
これから夏休み時期に入るので、金相場も休暇モードになるが、買戻しが一巡したところで、新規買いが出るか否かが焦点。
1300ドル近辺では、中国の販売第一線の買いも半減している。

2013年