2013年3月19日
キプロス島は、ギリシャ系とトルコ系に南北分断されているが、国際的に承認されているギリシャ系のキプロス共和国は、ロシアと欧州の投資マネーの主要な租税回避地となっており、住民の1割はロシア人と言われるほど。
そのキプロス沖に原油・天然ガスの存在が確認され、ロシア第2の天然ガス生産会社ノバテクが入札参加に動いている。
この海域を巡っては、既にギリシャ・キプロス共和国・イスラエルが排他的経済地域を宣言しており、トルコが反発している。このような状況下で、仮にギリシャがユーロを離脱すれば、ロシアとイスラエルに接近する可能性が十分に考えられる。
現地アテネで感じることは、NATOとしてもドイツとしても、おいそれとギリシャを切れないという現実であった。」
2012年6月5日づけ本欄「欧州の入り口 ギリシャ、忍び寄る中国の影」に書いたことだ。
歴史的に南下政策を採るロシアにとって、地中海上の島国キプロスは地政学的にも、経済的にも、そして資源政策上でも、極めて重要な位置にある。
既に、現地のシグマ・テレビは、ロシアのガスプロム(世界最大の天然ガス生産・供給規模を持つ半国営企業)が、キプロスの排他的経済地域にある天然ガス開発権と引き換えに、同国の銀行支援を提案したと報じている。EUとは異なり、救済に付帯する厳格な条件はつけない、とのこと。
これに対し、キプロスの大統領側近は、「検討の意志なし」と述べたと伝えられる。ロシアの通信社は、「そのような提案がされたが」議論のテーブル上には無い、としている。ガスプロム社の否定コメントも流れる。
但し、プーチン大統領は、今回の抜き打ち的なキプロス側の発表に対して不快感を露わにしており、「不公平で、プロフェッショナルにはあるまじき危険な決定」と批判している。今回の措置が実行されると、ロシア人預金者が約20億ユーロの損失を被るとの試算もあり、にもかかわらず、ロシアに事前相談がなかったことが不満のようだ。
20日にはキプロスの財務相が、ロシアからの25億ユーロの融資の更改、金利減免そして増額の交渉のためモスクワを訪問する予定だが、厳しい雰囲気の話し合いになるだろう。
さて、キプロス問題のポイントを整理してみると
1) 銀行資産がGDPの8倍を超える。同国中央銀行の統計では、680億ユーロの銀行預金の内訳は、430億ユーロが居住者、残りの200億ユーロ以上が主としてロシア籍の非居住者とされる。
2) この銀行救済のために、170億ユーロの救済案がEU内で合意されたが、条件として、一回限りの預金者部分負担条項が課せられた。これは、ドイツ国民とIMFからの「マネーロンダリング許すまじ」との強い要請を考慮したうえでの決定だ。
3) しかし、EU内には、10万ユーロ以下の預金は預金保険で救済する、との内部合意がある。投資のために国債を購入した投資家は、債務元本の削減(ヘアーカット)という投資リスクを覚悟の上だが、少額預金者は救済すべき、との考えだ。今回の措置は、この精神に反する。更に、今後の銀行同盟へ向けての話し合いに関しても、悪しき前例を残した。
4) とはいえ、放置すれば、銀行取り付け騒動が欧州の他の周辺国に飛び火する可能性もある。一方、救済疲れのドイツ国民は、キプロスのユーロ離脱やむなし、との考えに傾くかもしれない。最後の頼みの綱は、例によって、ECB(欧州中央銀行)だ。20-21日と4月4日に開催されるECB理事会が注目される。更に、20日以降にキプロスの銀行業務が再開された時点で、取り付けが拡大すれば、ギリシャ中央銀行も流動性供給を発動するに必要な現金を保有しているので協調の構えだ。
最後に、マーケットの反応だが、株式市場でも外為市場でも、過熱に対する警戒感を強め、円売り・株買いなどのポジションの利益確定手仕舞いの機会を模索していた投資家には格好の口実となった。
イタリア総選挙直後のリスクオフも短命に終わった記憶も鮮明に残り、ニューヨーク市場でもパニック的な反応は見られなかった。
最後は、中央銀行が救済に動く、との安心感も底流に流れる。
長期的には、マーケットの中銀依存症は、合併症のリスクも孕むが、当面は、マグニチュードが中震程度の揺れにとどまるようだ。
そして、貴金属市場では、欧州債務危機懸念から、欧州のディーゼル車に使われるプラチナが売られ、金は相対的安全性を求めるマネーが流入して上昇した結果、金は1607ドル、プラチナは1585ドルと値差が再逆転した。
ドル円は95円台まで戻している。
話は変わるけど、暑いね~。天気のこと。山の雪が融けてしまうのが心配(笑)。
今冬は、豪雪で(円売りポジションみたいに)、まだ、3メートル以上の積雪があるから、ゴールデン・ウイークまで滑れそうだけどね。もう完全に春スキーで、1時間も滑ると汗びっしょり。
うちの庭の桜も開花した。早い!
先週まで、ウグイスが毎朝来て、啼いてくれていたけど、今週はどこかに移動したみたい。
花粉が厳しいけど、スキー場は、花粉フリー。
そろそろ、タケノコの季節も近い。今年も京都のタケノコを食べに行くのが楽しみ♪