豊島逸夫の手帖

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NY株最高値に バフェット氏の教え

2013年3月6日

NY株最高値確実となった時点で、バフェット氏が米国経済チャンネルのインタビューに応じていた。
「出遅れ気味の個人投資家に対するアドバイスは?」と聞かれ、「healthy suspicion 健全な懐疑感を持つべし」と説いている。
「私は短期的な相場予測が苦手だ。よく外す。だからこそ、業者や専門家の言うことも、鵜呑みにせず、まずは疑ってみることは健全なのだ。初心者向け銘柄?まずはインデックスものから始めなさい。」

さて、ここからは、筆者の解釈だが、投資に積極的ながらも、まずは専門家や業者の言うことでも疑ってみるからこそ、「健全」なのだと思う。疑心暗鬼で結局何も出来ない。株相場なんてそもそも怪しい。そんなモノには手を出さない。だから私は健全だ、ということにはならない。リスクのない投資商品は今や無い時代だ。だから、リスクから逃げ回り、リスクを取らないリスクのほうが危ない。私は株も国債もドルも持っていないから関係ない、という人だって、年金や預金は株や国債や外貨で運用されているのだ。知らず知らずの間にリスクを取らされている。それを意識しない方がリスキーだと思う。

昨日まで3日間、来日していた著名投資家ジム・ロジャーズ氏と友人として行動をともにした。彼も、バフェット氏と同じようなことを言っていた。
「ドルや金の予測?私は短期予測を外してばかりさ。そういう質問はCNBCのコメンテーターにでも聞いてくれ。たしかに私は金を買っているよ。でも、それは短期売買で買っているのではない。売買トレードは苦手だからやらない。私の最愛の二人の娘(4歳と8歳)のために貯めているのだ。(ちなみに同氏は69歳)」
元祖ヘッジファンドと言われるファンド・マネージャーの言葉ゆえ、聞く方の心に響く。
彼も「日本株買っているかって?買っているよ。インデックスもの中心にね。」と答えていた。

NY株が最高値をつけ、短期的に、このまま上がるか、反落するか、専門家の意見は真っ二つに分かれている。
では、その専門家自身は個人的な資産運用をどうしているか、といえば、「健全な懐疑感」を持ち、むやみに流れに乗ってまとめ買いするようなことは避ける。だからといって一切買わないわけではない。
そもそも、株式投資の原点は、惚れた会社の株主となり、じっくりその株を保有し、その会社が生み出す利益の分配に預かることだ。
だからこそ、高値圏から買い始めるときは、コツコツ積立に徹するべきと思う。まとめ買いは避けることだ。
かく言う筆者も、コモンズ投信の渋沢健さんたちと「草食投資隊」を結成して、「娘のための30年積立投資」などのコツコツ積立方式による株・投信・金などの長期投資を共同セミナーで薦めている。
渋沢さんはヘッジファンドに関わった実体験から、筆者はスイス銀行外国為替貴金属部ディーラーの経験から、肉食系投機の修羅場を潜り抜け、その教訓として、個人投資家には、地味に時間軸によるリスク分散を説くのだ。
私は、ニューヨークやチューリッヒなどで3000回ほど相場を張った。その生涯成績はおよそ1600勝1400敗。相撲にたとえれば8勝7敗で勝ち越してきた。2連敗したら3連勝せねば勝ち越しのための星勘定はできない。7勝8敗を続けた同僚は職場から消えてゆく。そのような虚しいゼロサムゲームを12年も続け、そこから得た唯一の教訓は「相場に打ち出の小づちもないし、占いの水晶玉もない」ということだけだった。
だからこそ、個人投資家が、短期的なトレードで株やドル・金などで儲けようとするのは無謀だとはっきり言えるのだ。
筆者の個人的運用は、「コツコツ積立」に徹している。そうセミナーで語ると、ひそかに「プロの裏技」お披露目を期待していた参加者には、落胆の表情が走る。
しかし、高値圏にソワソワし始めた初心者が多いだけに、地味な草食系投資を声高に唱え続けようと思う。
コツコツ草食系投資なら始める時期はいつでもいい。

2013年