2013年11月27日
米軍爆撃機が中国防空識別圏を飛行と欧米メディアが相次いで報じている。日本では、顧客安全第一と飛行計画を中国側に提出していた国内の航空各社が政府の要請を受け非提出を決めた。海外出張者にも愛国心が問われかねない状況だ。
国内外のマーケットへの影響も無視できない。まず、株式市場では、欧米投資家マネーの反応が気になる。筆者が今年5月と9月にウォール街を廻ったときも、日本株投資の「チャイナ・リスク」を懸念材料とするファンド・年金基金が多かった。
具体的には靖国参拝の可能性などを聞かれたが、さすがに防空識別圏設定は想定外のシナリオであった。
日本株がアベノミクス相場上昇第二ラウンドを迎え、バリュエーションではまだ買えると動いていた外国人投資家たちが、今後の展開次第で、この地政学的要因にどのように反応するのか、注目される。
次に、外為市場では、有事のドル買いの可能性がある。さすがに当事国日本の通貨円に「安全性」を求めるマネーが流入する状況は考えにくい。防空識別圏での偶発的イベント発生が、チャート上の円安抵抗線を突破して円売りが加速するキッカケになるシナリオはありうる。
債券市場では、中国が保有している1兆2938億ドル(9月末現在)の米国債の一部を売却するような行動に出ることが絵空事とはいえないと感じる。米国側から見れば、来年1-2月に先送りされた財政問題をかかえ、10年債の利回りが3%を急激に突破するような状況は避けたいところだ。中国側から見れば、大量保有の米国債は「人質」でもあり、米国経済をかく乱する「武器」と見なすかもしれない。
対して、1兆1781億ドル(第二位)に達する日本の米国債保有は、「ともだち作戦」のパートナーへの友情の証しか?
そして、商品市場では、「有事の金」が話題になりそうだが、10月の米国財政「有事」の際にも買われなかった。欧州債務不安が再燃しても、今年は「リスクオフ」で「リスク資産」として売られている。かわって「有事のドル」が買われることになりそうだ。2014年に向けてリスクシナリオがひとつ増えた。