豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 北朝鮮が漁夫の利、中国防空識別圏問題
Page1525

北朝鮮が漁夫の利、中国防空識別圏問題

2013年11月26日

中国の尖閣諸島を含む一方的防空識別圏設定に発する日中関係の更なる悪化にほくそえんでいるのが北朝鮮ではなかろうか。
日米両国は東シナ海の安定を望むが、北朝鮮は同地域の不安定化が、相対的に同国の存在感を誇示する機会となりうる。
日米中の三国に、今回は韓国も「飛び火」により関与を余儀なくされた。
北朝鮮としては、この4ヶ国相互関係に、くさびを打ち込むことで、「不安定化」を煽る行動に出るかもしれない。その「くさび」として、東シナ海に向けてのミサイル発射演習などが視野に入る。
尖閣問題に関しては当然中国を支持するスタンスをとるが、中国と北朝鮮も領土問題を抱えていることも事実である。

いっぽう、中東では、時を同じくして、核開発問題に関するイランと欧米など6ヶ国の合意が、表面的には実現した。2011年12月のケリー国務長官が秘密裏にオマーンに飛び、米国とイランの関係改善にむけての根回しを開始したことに始まる今回の「歴史的合意」。しかし、水面下で進んでいた交渉は、中東周辺国の複雑な感情との葛藤の対峙でもあった。
これで、米国とイランの相互不信が解決されるほど、事は簡単ではない。しかし、オバマ大統領が「中東からアジアへ」外交戦略の軸足を移す動きは、尖閣問題の悪化により、促進せざるを得ないの展開になった。
中東では、「オバマはアジアばかりをうろついている」と非難される。写真は、今年筆者がドバイを訪問したときの現地紙の見出しである。

1525.jpgオバマ大統領の求心力が急速に低下しつつある今、中国の一方的防空識別圏設定により、「中東離れ」を確認するキッカケになるのではないか。
北朝鮮は、米国がアジアに介入し、北朝鮮にも目を向けることを望んでいる。不良息子が悪さをして親の関心を買う如き行動を続けるだろう。
日本にとっては、北朝鮮という攪乱要因も視野に入れる必要がありそうだ。

さて、金価格のほうは、24時間で1227ドルー1255ドルのレンジで乱高下した。「1200-1230ドルの価格帯は、安値圏の現物買いもインド・中国で復活するし、ここからの下げはそう簡単にはゆかないよ。本当の下げは、来年後半。イエレン新FRB議長がフォワード・ガイダンスで利上げ時期・条件などを示し始めると、金利の産まない金は大きく売られて1100ドルも考えられる」と取材に答えてコメントしたのだけど、今朝の日経朝刊では「イエレンの金融政策次第で更なる下げも」みたいな短いコメントになってた。これでは意味が全く伝わってないね。まぁ、いま、2014年相場展望を各誌に頼まれて書いているので、それを読んでください。
基本的には、先日書いた相場見通し(3か月)に変化なし。
短期弱気、長期強気のスタンスにも変化なし。

2013年