豊島逸夫の手帖

Page1414 NYに見る、「急ぎばたらき」の日本株買い

2013年5月16日

米国市場関係者と「外から見たアベノミクス」を論じるため、4日間NYに滞在中だ。
旧知の仲間が多いので、カジュアルな会話になる。
アベノミクス・パーティーは宴たけなわ。せっかく安部さんと黒田さんがシャンペン開けて円札を大盤ふるまいしてくれているのだから、とりあえずそのおこぼれにあずかろう。日本株へのアロケーションもアンダーウエイトのまま放置されてきたことだし。
しかし、JGB(日本国債)の利回りが乱高下しつつ急騰していることが不気味だ。中締めで、ホストの安部さんに、中国関連の発言でもされると厄介なことになりそう。とりあえず、会場の出口に近いところに陣取ってパーティーの様子でも拝見しよう。

彼らの本音はこんなところだ。
「参院選まではモメンタムに乗ってゆく。しかし、事前予測どおり自民圧勝になり、自信を深めた安倍政権が対中強硬路線をあらわにすることになると、チャイナ・リスクが一気に表面化するだろう。日本株を買い増したが、長くても年末までには、手仕舞うつもりだ。」
日本の時代劇風にいえば、「急ぎばたらき」ということか。2-3年かけて、ジックリ日本にコミットする「おつとめ」までは踏ん切りがつかないようだ。尖閣リスクが欧米で非常に強く意識されていることは13日付「TPP・尖閣にからむ円安問題」に書いたとおりだ。

アベノミクスのthree arrows(三本の矢)という表現も徐々に英語化し、growth strategy(成長戦略)を見極めたい、という反応は日本と変わらない。
そこには「毎年首相が変わる国」というレッテルを貼られてしまった負のカントリー・イメージが未だ強く残っている。
金と日本株に思わぬ共通点も発見した。ファンも多いが、懐疑論も非常に強い。その温度差が極端とさえ感じることもある。

もうひとつ気になる「通貨戦争」に話題を向けると、ウオール・ストリートでは、「日本経済にも頑張ってもらわないこちらも困るから、100円程度は許容範囲」という意見が大勢だ。
しかし、メイン・ストリートの「中間層」には、危機感が強く、「日本が通貨安で失業を米国に輸出している」との厳しい見方がほとばしる。
親しい友人には、思いきり筆者の言い分をぶつけた。「米国超量的緩和政策による120円から70円台までの円高過程では、通貨安競争で日本の独り負けだった。『近隣窮乏化政策』の犠牲者になったのだ。その結果、日本経済は円高デフレに陥った。日本の誇る技術力の比較優位を遥かに超えた円高だった。しかし、今、潮目が変わり、70円台から100円に戻すだけで、日本は『近隣窮乏化』の誹りを受ける。これはフェアではない。」
このようにひざ突合せて率直な議論をぶつけ合うと、相手の本音も遠慮なく伝わってくる。
国の間にこそ、こういう「がちんこ」対談が必要と感じた。
もてあまし気味の中国にしても、はっきり物言う日本側の指導者は遇する。ぶれる人物は相手にしない。
真剣なディベートは、敵対的反論を繰り返しつつ、最後は真の信頼感を生むものだ。そこで、直ちに「合意」となるほど甘くはないが、粘り強い交渉の出発点になることは間違いない。

なお、サード・ポイントによるソニー事業分割提案の帰趨をウオール街は非常に強い関心で見守っている。アベノミクス成長戦略の本気度を計る要因として、日本株投資に踏み切るか否かの重要な判断材料となることは必定と現地で感じた。

明日は、コネチカットのイェール大学にケース・シラー住宅指数で知られるシラー教授を訪ね、「外から見たアベノミクス」に関して対談する。

なお、金価格はドル全面高で急落。1400ドル割れ。明後日は、NY金先物市場のフロアーを訪ねます。弱気一色なのかな。だとすれば強気になれるのだけど。
昨日は朝の東海道線不通であやうく乗り遅れるところでした。
その余波で、予定のコンビニにも寄れず、恒例のお稲荷さんを買ってゆくことができなかった(怨)。
なんせ、「国際派」とか言われるけど、body chemistryは完璧なニッポンジンでノリ・納豆・味噌汁がないとその日、一日、労働生産性が上がらないのだ。スーツケースの半分は、煎餅・かりんと・大福などなど。以前、外国の荷物検査で開けられ、かりんとが異様な形のモノに映ったらしく、怪しいという感じで、これは何だと聞かれて閉口した。
新興国のエスニック料理は抵抗なく受け入れられるのだけどね。

極上のメイン・ロブスターがウエル・ダンまで熱入れ過ぎで、おまけに緑色のミントソースなどかけられると、「これは食材に対する冒涜」とさえ思ってしまうのだ。だから、日本で子供弁当用のヒョウタン型醤油入れを懐にしのばせ、ウエイターには、なにもかけず軽く熱入れてくれるだけでいいから、と頼む。そうすると、シェフが憤然と出てきて、お客様、なにか味付けにご不満でも、と来るのだ。いやはや。

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