2013年2月4日
先週、クレディースイスが発表した金予測レポートが欧米市場で話題になっています。
これまで欧米大手投資銀行の金関連レポートで、「2000ドルは到達せず。レンジを下方修正。」は相次いでいたのですが、明確に「2011年の1923ドルを越えられず。あれが史上最高値として残る。金上昇サイクルは終わった。」と明言したのは、これが初めてだったからです。
実は、これには理由があります。
通常、投資銀行の金関連レポートは金鉱株を販売するためのペーパーなので、価格予測にも上方バイアスがかかりがちです。
どころが、最近は、クレディ―スイスとUBSのスイス系銀行が、金業務に対して腰が引けてきました。
問題は、顧客から金を預かるときに開設される「金保管口座」。
これは、通常、「消費貸借契約」つまり、預かった金塊を返却するときに、預かった金塊そのものでなくとも、同種・同質・同量であれば可とする契約の保管口座なのです。
従って、単にカストディアン(保管者)として顧客の金塊を預かるのではなく、預かった金と同じ質量の金を返還する債務を負うので、銀行の貸借対照表に繰り入れねばならず、その分、銀行のバランスシートを膨張させる結果となります。
ところが、世界の大手銀行は、バーゼルⅢと呼ばれる銀行への規制強化により、できるだけバランスシートを圧縮している最中なのです。
そこで、金保管料を引き上げたり、金保管業務含め、金業務を縮小の方向に動いているのです。
ですから、金価格予測も弱気のバイアスがかかります。
それにしても、バイアスを抜きにしても、欧米ではドル建て金価格動向に対して弱気派が目立ち始めています。しかし、日本だけは「安倍円安」の進行スピードが、海外金安進行速度を上回るので、国内金価格が急騰しています。
欧米では「金の輝きは失せた」。国内では「32年ぶりの金高値」。
実に対照的ですね。
私の見方も、日経でのコメントからも分かと思いますが、基本的に来年2014年は下げの年と見ています。今年は、まだ、金融緩和傾向が続くので、1800ドル程度までの上げならあると思います。(年初は史上最高値更新もあるかと思いましたが、12月のFOMC議事録で緩和反対派の数が意外に多かったので、やはり下方修正しました。)
ただ、基本的にドル建て金価格にはさほど強気になれない。
でも、円建ては別。
円高の時代から円安の時代に移り、「円建て金価格が上がりやすく、下げにくい」状況になりました。円高の時代が長く、「海外で金が上がっても、円高で相殺される」と言われた頃とは様変わりです。
なお、海外金も下がっても1500ドル程度。中国インドが支えます。
1500ドルだってドル円95円で中値4581円(小売価格ではありませんよ。)ドル円100円なら中値4822円ですものね。
為替効果は大きいです。
なお、10年後には海外金価格も3000ドルにはなっているでしょうね。新規採掘してももはやそれほど生産が増えないから、供給はリサイクルに頼らざるを得ない。
そこに中国インドなど新興国の需要は米国の経済が回復すれば、今以上に増える。新興国経済減速の昨年でも、この二か国で年間金生産量の55%は買い占めましたからね。
経済成長が戻れば、軽く70%以上は買ってしまうでしょう。
やはり金は長期保有に限ります。