2013年9月25日
9月18日米国東部時間午後2時にFRBから発表された「緩和縮小延期」声明が、7ミリ秒(7/1000秒)以内に、トレーダーに伝わっていたとの疑惑が生じて議論を読んでいる。
ナネックス(シカゴの調査会社)が指摘して、FRBも調査を始めている。
この声明文は、ワシントンで午後2時(米国海軍天文台が設定する時刻)に発表されたが、その7ミリ秒内に、シカゴで金売買やE-miniフューチャーズ(個人向け少額先物取引)で、売買が成立しているというのだ。
光速通信を駆使してもワシントンからシカゴまで7ミリ秒以内で情報を伝達することはできないはず。
人間のまばたきが300ミリ秒という。
アルゴリズム取引では、「緩和縮小延期」の情報がインプットされた瞬間に、人間の力の届かない「ブラック・ボックス」の中で、自動的に金であれば「買い」注文が出される。
では、どのように、この声明がメディアに流れるか、そのプロセスを追ってみよう。
まず午後1時半に、各通信社の記者がロックアップ・ルームと呼ばれる鍵のかかったFRB内の部屋に入る。各自、事前に、機密漏えい禁止に関する厳しい書類に署名している。午後1時45分には、その部屋に鍵がかけられ、出入りは出来なくなる。そこで、声明文のコピーが配布され、各記者が急ぎ読み込み、午後2時からの報道に備える。
そのような環境下で、果たして、外部への情報伝達が可能か否か、FRBが調査中なのだ。
当局が神経質になるのは、今年に入り、同様の出来事が生じているからだ。
1月には、EIAの天然ガスレポート発表400ミリ秒前に、天然ガス先物売買が急増したという事例が話題となった。
6月にはISM製造業者指数を超高速取引トレーダーが15ミリ秒早く入手して事前に売買を実行したとの疑惑も明らかにされた。
更に、大手通信社が「特別会員」にミシガン大学消費者信頼感指数を午前10時正式発表より早く午前9時54分58秒に伝えていたことが議論の対象となった。このような事例は、データ・プロバイダーのビジネスとして既に定着し、普通会員でも午前9時55分には、データにアクセスできる。これが、「情報格差」の例とされたのだ。
そして、今回のFOMC声明文。
さすがにFRBも無視できなくなったようだ。
特に、18日のFOMC声明文発表直前まで、金市場は「9月量的緩和縮小発表」を織り込み、売りが先行する中で1300ドルの大台攻防が続いていた。しかし、大方の予想に反し、「緩和縮小延期」となったので、声明文発表直後に1340ドル台まで急反騰し、更に同日の大引けまでには1370ドルまで続騰した。先物市場での空売り投機筋が、一斉に損切りの買戻しを入れたわけだ。
超高速取引が支配する市場では、7ミリ秒のアドバンテージは大きい。
筆者は今年5月と9月にニューヨーク商品取引所を訪問しているが、ピット(売買の場)では、取引員がブースに備え付けのアルゴリズム売買モニター画面に見入り、また、タブレットで電子取引の最新売買状況を常にチェックしている姿が印象的だった。
もはや、場立ちの出る幕はない、と嘆く旧知にベテラン・フロアー・トレーダーもいた。
今のトレーダーに必要なスキルは、テレビゲームで鍛えられた、瞬時にキーボードを叩くスピードである。
ということなんだけど、ロックアップ・ルームの記者たちは、入室時に携帯持ち込み可だったらしい。要は大手通信社とFRBの間の信頼関係の上に成り立っていたのだろうけど、ガードが甘いといえば甘いよね。
この件は、今後も思わぬ展開がありそう。
それにしても、プログラム・トレードで売買が人間の手を離れると、個人投資家の短期売買に勝ち目はないということ。
結論は「長期投資」に尽きる。
この3連休は、久しぶりに出張なしだったので、早くもスキーシーズンに備え、自主トレを高原でやってきました。長時間飛行機内が続いたから、カラダがごわごわになっていたので、気持ち良かった~
高原はもう秋で、夜は10度以下。
待望のスキーシーズン近しで、ワクワクです(笑)。