豊島逸夫の手帖

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2013年世界のリスク発表

2013年1月8日

新年恒例のユーラシア・グループが見る世界のリスク、トップ10が発表された。
1. 新興国
BRICsともはや一括りが語ることはできない。ブラジルは先進国並みに近づいている。しかし、ロシアは政治腐敗、頭脳流出、資本逃避などをコントロールできず、新興国どころか、沈みゆく国となっている。インドは経済減速に対して政治的対応も、その意思も見えない。

2.中国の情報社会
中国の中産階級は家庭でも職場でも情報へのアクセスを求めるが、中国政府は引き続き情報を規制している。その結果、日本との領土問題などでナショナリズムが沸騰しつつある。中国はいずれ世界一の経済大国となるが、それでも、国民は貧困で、全体主義国家であろう。これは大きなリスクだ。

3.アラブの「夏」
中東ではイスラムのスンニ派とシーア派の暴力的対立が激化している。アラブの春以降、経済成長も実現できていない。米国は傍観視。そこに他の勢力が入り込む。

4.米国
金融危機や政治的要因に誘発されたリセッションを予言しているわけではない。しかし、財政の崖問題に見られるような「瀬戸際政策」は経済成長を阻む。しかし、新興国に比し、リスクは小さい。

5.JIBs(ジャパン、イスラエル、イギリス)
この3か国は親米国であるが、米国にとっての重要性は薄れつつある。にもかかわらず、中国、中東、経済危機の欧州の隣りに位置する国々で、地政学的リスクに晒されている。しかも、その地政学的問題に対して建設的な役割を果たせず、国内問題により対応できずにいる。日中領土問題に有効な解決策が見いだせない。イスラエルは中東のあらゆる火薬庫に接している。英国は欧州諸国の連帯から取り残されている。

6.欧州
金融危機に対し、各国が主権を守るために統合のペースを遅らせている。大きな妥協が必要なのだが、経済減速や政治的なユーロ懐疑論が妨げとなっている。

7.アジアの地政学的問題
中国の脅威に対し、米国がアジア地域への戦略を強化する中で、米中関係の緊張が、ゼロサム・ゲームの政治的応酬を産んでいる。

8.イラン
イラン、イスラエル、米国を巻き込む「影の戦争」がエスカレートしつつある。原油価格高騰リスクも無視できない。シリア情勢も悪化する中で、打開策が見えず。

9.インド
政治問題が、インド経済成長のサクセス・ストーリーを阻む。

10.南ア
アフリカは今や、経済のダイナミズムと政治の不安定性を特徴とする新興国の代表的存在になりつつある。特に中産階級が向上している。しかし、アフリカにおける最大級の経済発展国である南アとナイジェリアは、多くの問題を抱える。

以上がトップ10であるが、日本としてはJIBsの新語が気になるところ。米国の観点では、中国と対峙する日本と、中東諸国と対峙するイスラエルが、似たようなリスクを抱える国に見えるようだ。そこに、取り残された英国も加わると、なにやら切ない思いである。
とはいえ、2013年は、先進国より新興国により大きなリスクあり、とするのは、それだけ世界の新興国依存度が高まっていることの裏返しであろう。
それにしてもJIBsという新語が定着しないことを望む。

さて、国内金小売価格が円安により5000円に接近中だ。国際金価格が軟調なれど、急速な円安による高値が生じている。まさに「安倍金高」現象である。
よくセミナーで、金高騰によりポートフォリオの中の金の割合が30-40%まで膨れてしまったが、どうすべきか、と問われ、これまで「日本株」と答えてきたが、今の状況でも、リバランスであれば保有金の一部を売り、日本株にシフトすることが良かろう。

2013年