豊島逸夫の手帖

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FRB出口模索 金続落

2013年2月21日

20日のニューヨーク市場引け前にFOMC議事録(1月分)が発表され、市場に異変が生じた。
NY株価は14,000ドル前後から一気に80ドル近く急落し、13,927.54ドル(前日比108.13ドル安)で引けた。ドルインデックスは80.90から81.15まで急騰。外為市場はドル高が加速した。
そして「QE依存症」の金価格は、発表前からFOMC議事録に怯え、1600ドル前後から1560ドル台まで急落した。

マーケットが敏感に反応したのは、"many" と "a number of " というどちらも「多数」を意味する英単語。
まず、多くの(many)FOMCメンバーが更なる資産購入のコストとリスクに懸念を表明した、とのくだり。
次に、多くの(a number of)FOMC参加者が、資産購入の有効性、コストそしてリスクについて継続的な評価の結果、労働市場の見通しに顕著な改善が見られる前にも、資産購入を減量或いは停止させるかみしれないと発言した、との一節。
後者については、これまでのFOMCで、失業率が6.5%を下回るまでは資産購入を継続、との認識が示されていたので、その前にも停止の可能性が示唆されたことは、市場に、梯子を外されたような失望感を産んだわけだ。
そして、QE早期終了を支持するタカ派が、前回は「several = 4~5名程度の理事が資産購入プログラムを2013年末よりかなり早いタイミングで縮小あるいは停止することが適当」と表現されていた。
この"several"から"many ,a number of" に形容詞が変わったことは、タカ派の数が明らかに増えたことを示唆している。
しかも、昨年は、反対派の数を "a few"(2-3名)と表していたので、時系列で追うと、趨勢的に増加していることは明白だ。
これにより、市場は「いよいよ出口戦略近し」と身構える。
なお、前回なかった二つの目新しい発言も目を引く。
"several"の理事による、経済状況次第で、資産購入のペースを変える準備をするべき、との意見。
また、"some"(数名)の理事が、量的緩和が債券市場での過剰なリスク・テイクと、その結果としての金融安定の攪乱効果に対する懸念を表明。
総じて、FRBのバランスシート膨張の副作用を案じている様子がうかがえる。
FOMC内部で程度の差こそあれ、タカ派が増えていることは間違いなさそうだ。

金融引き締めへの転換の兆候が、かくまで露わになると、史上最高値寸前まで高騰して高値警戒感も漂うニューヨーク株式市場はびびる。
今後は、これまでのニューヨークと東京の市場が共振して上昇するパターンは変化せざるを得まい。ニューヨークでは大型M&Aが市場の牽引役となっているものの、東京株式市場は、主として自力でアベノミクス・エンジンの推進力のみで上昇を試みることになろう。
一方、円安は、QE早期終了の可能性はドル高材料になるので、円売り材料とドル買い材料が入れ替わり市場で意識される展開が考えられる。

そして、これまでQE=ドル安をテコに高騰してきた金価格には、特にFOMCショックの影響が強い。下値模索の過程に入った。
中国・インドの現物需要は1500ドル台で活性化することは間違いなく、下支えは堅固なれど、ソロス氏のようなヘッジファンドの手仕舞い売りが一巡するまでに時間がかかりそうだ。
長期的には1500ドル台は値ごろ感があり、円安ですし、私も下がれば下がるほど、ひさしぶりに徐々に強気に傾いてゆきます。

2013年