豊島逸夫の手帖

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史上最高値を照準に捉えたNY株価

2013年2月28日

あのイタリア選挙ショックはいったい何だったのか、と言われるほど市場のセンチメントがリスクオフからリスクオンに急転している。NYダウ平均も史上最高値の14,164.53ドルにあと89ドルに迫る14,075.37ドル(前日比175.24ドル高)で引けた。NY証券取引所のフロアーも後場は、ヒョッとして今日にも史上最高値更新か、との期待感が走る。

ヘッジファンド関係者の間には、バーナンキ・ラリー、"Don't fight the FED "バーナンキには逆らうな、との言葉が飛び交う。
2日目のバーナンキ議会証言でも、彼の緩和スタンスは全くぶれなかった。住宅市場についても"hit the bottom"と底打ち宣言とも取れる発言。イタリア総選挙が市場のムードに水を差した直後、酒が切れかかったパーティーに、絶妙のタイミングで差し入れしてくれたかのようだ。
米国経済指標もバーナンキ発言との相乗効果をもたらした。中古住宅市場の先行指標とされる中古住宅販売仮契約指数の1月分が発表され、前月比4.5%と事前予測の1.8%を大きく上回る力強い上昇を見せたのだ。
歳出強制削減発動が翌日に迫るものの、フロアー・トレーダーは、それで世界が終わる(the end of the world)わけでもないさ、と肩をすくめる。
NY時間の早い段階で、イタリア国債入札好調との報道が流れたことも地ならし的に市場の不安感を和らげていた。利回りは0.5%ほど上昇したものの、応札倍率は1.654倍と、旺盛な需要を見せたからだ。
逃避マネーの円が再び売られ、91円台から92円台へ戻ったこともリスクオンの象徴的な展開。
アップルの臨時株主総会開催日でもあったが、クックCEOから、期待された新商品開発のテレビや廉価版iPhoneへの言及は無し。低迷する株価については「現在の株価は私も取締役会も好きではないが、長期的に見て欲しい」とかなり苦しい発言。同社株価も前日比4.40ドル安の444.57ドルへ下げた。
しかし、市場全体で見ると、殆どのセクターが上昇を見せる力強いモメンタム(勢い)をテコに横綱相撲で押し切った感じだ。
やはり、バーナンキ・プット(市場のムードが悪化すると、バーナンキ氏の発言がプット・オプションの如く下値を支える意味)は生きていたことを実感した1日であった。

マネーが株に流れたため、金は反落。
但し、バーナンキ発言は基本的に金にとっても上げ材料というか下値支え要因である。
円は調整して円高に振れても、91円程度だった。

2013年