豊島逸夫の手帖

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シリア巡る米露ミニ冷戦 切迫化

2013年8月27日

26日のNY株式市場の大引け前、米国務長官ケリー発言に市場が揺れた。
記者会見で、シリアのアサド政権が市民に対して科学兵器を使用したことを「疑いなき」事実と断定し、「証拠隠滅」「道徳的にけがらわしい」と外交的には最上級の非難の言葉を述べたからだ。
既に、イギリス、ドイツも、シリアに対する「罰則的行動」を検討の対象としており、俄かに、連合軍軍事介入の可能性が「地政学的リスク」として意識され始めている。

更に、ロシアのプーチン大統領が、「化学兵器使用の証拠なし」として、軍事介入には反対の姿勢を取りつづけていることが、市場の懸念を増幅させている。
既に、スノーデン問題で急激に冷え込んだ米露関係が、シリアへの対応の違いで、悪化の一途を辿りかねない様相だ。
9月リスクとして、米国量的緩和縮小の動きとドイツ総選挙(欧州債務懸念再燃)に、シリア情勢が加わり、リスクオフに陥りがちな地合いになってきた。

地政学的要因浮上となると、真っ先に反応するのが金市場。ケリー国務長官記者会見直後から、金価格は急騰。それまで1400ドル前後で気迷いムードであったが、新たな先物買いポジションが膨らみつつある。
伝統的に中東には独自の情報パイプを持つ中東系ディーラーたちは、ここ2週間ほど、エジプト・シリア情勢悪化を見込んで、NY金先物市場で新規買いを蓄積していた。
なお、個人投資家が注意すべきは、仮に、シリアへの軍事介入が現実となれば、したたかな中東系ディーラーは一斉に「利益確定売り」に走る可能性があること。
イラク戦争開戦直後も、「開戦不可避」と見た中東筋が数か月前から大量の金先物買いを入れ、開戦直後から、一斉に利食いの売りに出で、金価格は急落している。典型的な「噂で買って、ニュースで売る」手口だ。その時、当の中東系ディーラーは、外電のインタビューに答え平然と「有事の金は買い」と語っていたものだ。メディアに流れる「有事の金」に誘われ、開戦直後に金買いに走った個人投資家は、見事に梯子を外される結果となった。
「有事の金」は売り。そもそも、平時に買った金を売って凌ぐことで、金の本来のヘッジ効果が発揮されるのだ。

昨日は、ブルームバーグ機関投資家セミナーで講演したのだけど、株の上値の重さを感じ、逆に、暴落後の金のvalue(値ごろ感)を感じる参加者のコメントが印象的だった。
セミナー後の懇親会で真っ先に出た質問が「最近、お奨めのスイーツは?」超真面目な機関投資家からの軽い質問に思わず大笑い。投資には、そのぐらいの余裕が必要だよね。切羽詰まった投資に、あまり良い結果は出ないもの。(ちなみに私の答えは、最近は千疋屋のフルーツパフェと京都のワラビもち巡り♪)
機関投資家セミナーにしては、くだけた雰囲気で良かったな。
普通は、能面みたいな顔ばかりで、質問も同業の参加者を意識してか出ないものね。

なお、電車の中吊りで、週刊朝日「夫だけに任せておけない。妻たちの資産"安全"防衛術。 コツコツ型純金積立」と出ていたけど、これが取材された記事みたいだね。まだ、読んでないけど。

2013年