豊島逸夫の手帖

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64年東京五輪記念銀貨に脚光

2013年9月9日

2020年オリンピック東京開催が決定したことで、関連商戦が既に始まっていますね。
貴金属関連では、64年東京オリンピックの記念硬貨(日本初の記念硬貨)をまとめ買いする人が増えているそうです。
当時は、千円銀貨が1500万枚、百円銀貨が8000万枚も発行されました。
この記念銀貨は、その後、プレミアムがつき、70年代には18,000円、バブル期には25,000円の値がついたそうです。
(記念硬貨なので、状態の良いものの値ですけどね。)
しかし、バブルの崩壊とともに、なんと2000円まで価格は暴落。
ところが、最近、オリンピック開催決定日に近づくにつれ、その2000円で千円記念銀貨をまとめ買いする人が出て来たそうです。
東京当選に賭けたのですかね。
百円銀貨もネット・オークションで一枚100円以上の値で売買されているようです。
2020年の東京オリンピック記念には金貨とかプラチナ貨とか鋳造したら売れるでしょうね。1964年よりは日本の所得水準も上がっていることは間違いないですから。

ただ、記念金貨・銀貨はあくまで収集用が主なので、使われている金や銀の価値より、希少性、つまり発行枚数とか保存状態により、価格が大きく左右されます。販売店も貴金属店ではなく切手・古銭収集専門の店になります。
資産として持つなら、金やプラチナの価値に比例して価格が動く「地金型金貨・プラチナ貨」があります。
一部の国の造幣局が製造販売しており、売れれば必要なだけ鋳造しますから、発行枚数限定の記念金貨とは根源的に異なります。ですから、記念金貨のような希少性によるプレミアムはつきません。あくまで、使われている金やプラチナの価値が、その貨幣の値段になります。若干の製造コストは上乗せされますけどね。
造幣局が製造しているので「法定通貨」です。
額面も刻まれていますが、非常に低い名目的な額面で、実際に使われている金の価値のほうが遥かに高いので、額面で売買する人はいません。

実は、この額面を、逆に実際に使われた純金の量より遥かに高く設定して、大失敗した例が1986年に発行された昭和天皇御在位60年記念10万円金貨です。額面は10万円。一枚純金20グラムなので当時の相場で約4万円の価値しかありませんでした。こういう金貨を製造すると、どういうことが起きるかというと、純金をちゃんと20グラム使って偽金貨を作っても、額面10万円で売れる、或いは、通貨として10万円の買い物の代価として払うことに使えるので、大儲けできるわけです。当時、さっそく中東の偽金貨製造業者が大量の純金製偽金貨を日本国内に持ち込みました。普通、偽金貨といえば、タングステンなどの比重が重い金属を使うので、本当に純金製ということで騙されたプロの業者もいたようです。ちなみに、大蔵省の発行した枚数は1000万枚でしたが、かなりの売れ残りが出たと言われています。
ただ、額面10万円は保証されているので、10万円で購入して損することはない仕組みです。考え方によっては、紙の一万円札10枚より10万円金貨1枚のほうが、実質価値ははるかにありますよね。

ところで、この純金20グラムの記念金貨が1986年当時、金の価値にして4万円程度と書きましたが、最近、金価格がグラム5000円を超えたときには、額面の10万円を上回る金の価値になりました。その後金価格は4000円台なのですが、いずれ5000円を回復すれば、記念金貨としてのプレミアムもつきそうですね。
この10万円金貨を未だタンスの奥にしまって持っている人が結構多いですが、先の楽しみがあるから、それは今売らないほうがいいですよ。
一万円札10枚をタンス預金しても、その紙幣の価値は上がることはなく、逆にインフレになれば実質価値は目減りします。
でも、10万円金貨なら、その貨幣の価値が(特にインフレになると)上がりますから、お得だと思います。

一般的には、金貨といっても、収集用の記念金貨と、資産用の「地金型金貨」では全く異なることを知らない人がまだ多いようです。

2013年