2013年4月1日
「日本株保有者として私はチャイナ・リスクが一番気になる。海外では右傾化といわれる安倍首相だが、尖閣問題の落としどころが見えないのだよ。」
この一年で4回目となる著名投資家ジムロジャーズ氏との対談での筆者への問いかけだった。
その前後にも多数の海外機関投資家と意見交換したが、「参院選挙で今のポジティブなモメンタム=市場の勢いを日本人自ら絶つことは考えられない。そこでリスクは安部圧勝となった場合だ。勢いに乗って、中国を刺激するような発言や、問題視されている神社に参拝するなどの行為に出ると、尖閣問題が一気に悪化するリスクがある。だから、参院選挙前に自民優勢の展開になれば、日本株も一旦手じまうことになろう。或いは参院選挙後まで日本株は様子見。」というコメントに何回か接した。
そこに、北朝鮮リスクが新たに加わった。アベノミクス相場に地政学的リスクが顕在化している。
尖閣・北朝鮮ともに先が読めないので、サプライズ性があり、かりに「有事」に近い状況まで緊迫化すると、材料視されやすい。具体的には外人による日本株売り、円売りという「日本売り」のシナリオだ。
地政学的要因は先が読めないが、これと対照的に充分すぎるほど先が読まれた要因が日銀金融政策決定会合だ。
黒田日銀の金融政策の選択肢は限られている。長期国債の購入、実施の2013年への前倒しなど、既にメディアでは陳腐化するほどに報道されている。
例えていえば、黒田新日銀総裁は、市場相手に、持ち札公開のポーカーを強いられている。そこで材料出尽くしによる株売り、円買いの可能性もひんぱんに語られるが、これとて既に新鮮味はない。
更に踏み込んでETFなどのリスク資産購入も政策メニューにはあるが、切り札はできるだけ温存しておきたいところ。こうなると、黒田日銀初の金融政策決定会合で市場が大きく動くことは考えにくい。
むしろ、今週金曜日に発表される米国雇用統計を始め、FOMC議事録で明らかになるハト派タカ派の議論実態など、米国側の材料により敏感に反応しそうだ。
バーナンキFRB議長の任期切れを2014年1月に控え、出口を模索するFRBからは、ドル高を誘うコメントも出やすい。
更に、ドル円相場は、日米金融当局の量的緩和競争の中で、相対的に中央銀行のバランスシートをより大きく膨らませた国の通貨が売られる状況でもある。ここでは、既に金融緩和の出口を模索するFRBと入口に立つ日銀の差が金利差として顕在化することで、ドルが買われ円は売られやすい。
また、海外の通貨投機筋の円売りの買戻しによる円高も93円―94円水準まで進行すると、新規の円売りがすかさず入る。
総じて、外為市場でのドル円相場は円安からドル高局面に移行している。株式市場は地政学的リスクが調整局面入りの引き金を引きかねない様相だ。
北朝鮮は新年度入り早々にsell in May(五月は売り逃げ)の口実に利用されやすいが、尖閣リスクは参院選後が要注意だ。