豊島逸夫の手帖

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NISA初日からリスクオフの洗礼も

2013年9月30日

10月1日から米国政府機関が17年ぶりに一部閉鎖される可能性が強まっている。27日(NY時間)に米国議会下院は、医療保険改革法(オバマケア)の一年延期を条件として2014年会計年度の暫定予算案を賛成多数で可決したからだ。上院はこの延期を認める姿勢は見せず、民主共和両党に歩み寄りの兆しは見えない。
この展開に対するマーケットの反応は、瀬戸際政策を「オオカミ少年」と受け止め、一見たかをくくっている。しかし、政府職員の一時減少により、今週末に予定されている米雇用統計の発表が延期される可能性がひっかかる。
しかも、10月1日には安倍首相が消費増税決定を発表する予定で、この要因のマーケットへの影響も見方が分かれ、ポジションが取りにくい状況だ。
結果的に、市場がリスクオフに振れると、円高になりやすい地合いになる。

NISAはいきなりリスクオフの洗礼を受けかねない市場環境だ。
そもそもNISAは、投資初心者が長期投資を始めるキッカケとして注目されている。しかし、そうはいっても初めて株の世界へ恐る恐る足を踏み入れた途端に、世界の市場がリスク回避傾向と言われると、Buy and forget(買って忘れる)と説かれても、心理的な動揺は避けられまい。あくまで、投資で儲かった場合の条件つき課税軽減措置である。
投資初心者には、「急ぐな」と言いたい。

口座獲得競争に焦っているのは、金融証券業界だ。そこから発するノイズに振り回されずに、マイペースを保つことが肝要である。
まずは、NISAの口座を開設すると、それまでテレビのバラエティー番組しか見なかった人が、急に国際ニュースに目がゆき、バーナンキ発言やらシリア情勢などが気になり始めるだろう。これは人間の欲が良い方向に出る例といえる。この好奇心エネルギーを大事にしたい。
相場のプロ40年の筆者でも、己の欲を超越した「悟り」など開けぬ。
やはり買ったものの値は気になる。しかし、リスク耐性は鍛えられているので、すぐに値が下がっても、動じることはない。

しかし、初心者は、途端に目の前が真っ白になる人も多い。
そこで、まずは、己の欲を「金儲けにはまる」エネルギーに向けず、「気になる経済情勢について勉強する」方向に向ける努力をすべきと思う。
そのうえで、まずは「少額」から実践してみることだ。例えば、一回居酒屋や女子会で使う3000-5000円程度の額から毎月積み立て投資を始めるのであれば「忘れられる金額」の範囲内で無理はなかろう。
理屈だけ勉強しても、投資で成功するとは限らない。もし、そうであれば、リタイアしたアナリストが儲けられるはずだが、現実は「説明」はうまくても、投資上手とはいえない。
ただ、金融知識が増えれば、「未知の投資への不安」は和らぎ、リスク耐性は徐々についてくる。
それから本格的な投資を開始しても遅くはない。
これが今頻繁に遭遇する「アベノミクスやらNISAやらでソワソワし始めたが、マネー誌を読んでも記事内容が理解できない」初心者へのアドバイスである。

2013年