豊島逸夫の手帖

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アベノミクス相場の変調加速

2013年6月7日

市場の潮目が急速に変わりつつある。円売り、日本株買いポジションの巻き戻しが本格化してきた。
米雇用統計発表前夜の6日の欧米市場はドル全面安の様相。
マクロ的背景は、足元のISMなど米国経済指標悪化傾向によりtaperと呼ばれる緩和縮小観測が後退していること。米国雇用統計も事前予測では若干の悪化が見込まれている。
そのようなドル反落を誘発しやすい市場環境の中で、6日開催のECBは政策金利据え置きを決定した。ECBが利下げしなかったことで、欧州経済の緊縮疲れを懸念して売られてきたユーロが、まず反発。
このユーロ高、ドル安が間髪入れず、円買いを誘発した。
この円高がニューヨークの午前中に99円台から95円台まで3%もの急騰を演じた後、97円台まで反落。円のボラティリティー(価格変動性)の激しさに市場は戸惑い、急速にリスク回避姿勢を強め、一時はニューヨーク株式市場にも円高ショックが波及。ダウも116ドル安まで下落した。(その後は反騰して80ドル高で引けている)
円買いが特に加速したのは、アベノミクス相場で膨れ上がった円売り、日本株買いのファンド・ポジションの「巻き戻し」が起こり始めた矢先だったからだ。
更に、安全資産とされる米国債の利回りが2%を超えている状況では、安全性を求めるマネーの受け皿が分散し、円と金に向かったことも指摘される。
英ヘッジファンド大手マン・グループが5日に、3日までの1週間で運用資産が6.1%減少したことを発表。その要因となったボラティリティーの異常な高さに、市場は警戒モードに入っていた。

この極めて不安定な状況は、7日発表の米国雇用統計次第で、更に増幅する可能性がある。
米雇用好転ならば、緩和縮小観測が再び勢いを得て、急速にドル高、円安、日本株買いに戻る可能性がある。
逆に、米雇用悪化ならば、緩和継続観測が強まり、ドル安、円高、米国株買い、日本株売りが加速しそうだ。
なお、米雇用統計など米国経済指標が好転するのは、本来、米国株式市場には良い材料となるはずだが、最近の傾向は、緩和縮小により過剰流動性相場のモメンタム(勢い)が削がれることを重視して、株価には悪い材料とされる傾向が強い。
但し、この解釈については、市場内部でも意見が分かれているので、今後変わる可能性がある。
ジャパン・リスクと米緩和縮小観測の間で、市場は当面大きく揺れそう。乱気流相場に備え、投資家はシートベルトを低目にきつく締めておく必要がありそうだ。

2013年