豊島逸夫の手帖

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早くも送別会モード、FRB議長議会質疑応答

2013年7月18日

注目のバーナンキ発言に新鮮味はなく、市場はおおむね平静であった。
唯一のサプライズらしきことは、マーケットが「予定稿」のハト派トーンに関心を示し、その後の「質疑応答」には反応薄だったことか。
これまでのバーナンキ講演では、「予定稿」はほぼ織り込み済み。「質疑応答」に入り、一部議員の厳しい質問への答えに、サプライズ発言が見られたからだ。
バーナンキ議長は、来年1月に任期を終え、続投はない、との観測が有力である。そうなると、FRB議長の議会証言は半年に一回の開催ゆえ、バーナンキ氏にとっては最後の機会となる。
来年1月にFRB議長の座を去る立場とすれば、緩和縮小が本格化するであろう来年の金融政策について語ることが出来るであろうか。
一方、質問者の議員側としては、既にバーナンキ氏送別モードだったかもしれない。そこで、質問で追及の手を若干緩めたとも考えられる。
とはいえ、バーナンキ議長も、「緩和縮小」を開始せずに任期を終えれば、歴史に「ドル札をばら撒いたまま去って行った人物」との名を残しかねない。
量的緩和は「入るは易く、出るは難い」政策だ。
なんらかの「出口」の目途を明確にしたうえで、後任に引き継ぎたいところだろう。
特に、後任人事は、バーナンキ議長に忠実なハト派のイエレン副議長が本命視されていたが、ここにきて、ローレンス・サマーズ氏が対抗馬として有力視されてきたタイミングでもある。
このような状況を勘案すれば、9月のFOMCでは、米国経済指標が極端に悪化せぬかぎり、いよいよ緩和縮小開始を具体的に明言に踏み切るのではないか、と見る。

なお、今回の議長発言に、唯一、強く反応した市場がある。
それが、金。
1300ドルの大台を瞬間的に突破した後、1270ドル割れまで急落した。金利を産まない金にとって、「利上げ」は天敵である。「緩和縮小」の先に控える「引き締め=利上げ」は未だ先の話ではあるが、水平線上にそれらしき兆しが視野に入れば、先取りして売られのだ。

金は、緩和縮小についても、いち早く反応し、暴落を演じた。
金市場内部を見渡せば、早い段階で、売るべき人たちは、ほぼ売り切ることになりそうだ。

2013年