2013年10月15日
ノーベル経済学者シラー教授と対談したのは、今年5月22日。場所は、コネチカット州ニューヘイブンにあるエール大学キャンパス内の同教授研究室であった。
日経CNBC番組の一部なので、テレビ・カメラを入れての収録だったが、気さくな人柄で、視聴者にも理解できるような言い回しで応じてくれた。
今回の受賞理由として、資産価格の価格形成についての実証的研究が挙げられているが、同教授は、極めて実務的な学者でもあった。
時には、メディアで株価予測に近い発言もする。
1990年代後半のITブームをいち早く「バブル」と断じ、その後、著書「根拠なき熱狂」がベストセラーになった経緯もある。
そこで、まず、「アベノミクス」に対する中長期的評価を聞いた。
彼の答えは、「株価指数などのマクロだけを追っているとバブルの印象を受けがちだが、ミクロすなわち銘柄別の株価を見ると、実態を反映しており、バブルとはいえない」ということ。
これは「株価はマクロでは非効率的(macro-inefficient)だが、ミクロでは効率的(micro-efficient)であり、過度な株価変動は、株式市場全体において最も顕著である。株式市場をマクロで見ると、トレンドとフォローしているだけだ。しかし、個別の株価を見ると、株式ブームや市場クラッシュに影響されるものの、ある程度予見可能なファンダメンタルズの動きで、PERの変動も正当化される。」との議論に基づく。
2012年出版の「Finance and Good Society」の中の「バブル」についての記述から、具体例を挙げた。
「将来の配当期待の若い会社の株価を個々に検証した。効率的市場理論によれば、当面無配当でも、いずれ値上りして、キャピタル・ゲインが配当無し状態を補う。検証の結果、これらの無配当株については、平均より高いキャピタル・ゲインがあることを確認できた。従って、個々の株価のバリュエーション(評価)には意味があるのだ。」
「資産市場は完全ではない。個々の株価変動の大きな部分は、経済的合理性では説明できない。バブルは頻繁に起きる。しかし、合理的に説明できる部分も充分にある。ゆえに、個々の株価が、運用面で重要な情報を提供できるのだ。」
ちょうど、5月23日の株暴落の前週でのコメントであった。
「日本株全体としては、割高感も感じられるが、アベノミクスの方向性としては、長期的に良い流れだと思う。特に、資産の半分以上を銀行で保有する日本人のアニマル・スピリッツ(野心的意欲)を活性化させた意義は大きい。」
人間の持つアニマル・スピリッツについては「報酬系とされるドーパミン神経系は、必ずしも株価の更なる上昇という欲が満たされるときだけでなく、報酬(リターン)を得ることを期待して行動している時にも活性化するのだ。これがリスクを取る行動に人間をかきたてる」と解説する。
なお、今後有望な株式として、「欧州株」を挙げた。
「古代から歴史のある国々が自己崩壊するとも思えず、割安感を感じる」という予測であった。
さて、昨日から今日にかけて、日経電子版に金担当記者の書いた「金の時代は終わり」有力アナリスト発言の衝撃、と題する記事が掲載され、昨日は全日アクセスランキング2位、今朝も3位と、注目度が高いようです。
本欄でも紹介してきたポール・ウォーカーの発言についてです。
私の反論も含めて、良くまとまっていると思います。
私は本欄で繰り返し書いてきたように、短期弱気、長期強気。
ポールは短期も長期も弱気。
最近、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーも弱気見通しを出しています。こういう弱気論も紹介して公平を期すべきでしょう。健全なディベートだと思います。
なお、金価格が史上最高値をつけたときは、彼らは2200-2400ドルの高値予測出していました(笑)。
それにしても、写真で見ると、私は日焼けしてるな~~。