豊島逸夫の手帖

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1兆ドルプラチナコイン発行で米国債務危機を回避?

2013年1月9日

米国財務省が額面1兆ドルのプラチナコイン(法定通貨)を発行することで公的債務上限を実質的に1兆ドル引き上げることが可能。
こんな議論が米国の主要メディアに流れている。

荒唐無稽な案ゆえ、筆者は、これまで無視してきたが、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン・プリンストン大学教授がニューヨーク・タイムズや米国ABCテレビで「Why not? いいじゃない」と発言。英エコノミスト誌も取りあげ、ナドラー下院議員(民主党、ニューヨーク州)も公に賛同を表明するに至り、事の次第だけでも記しておく。

1996年に米議会で「財務省は任意の額面、大きさのプラチナコインを法定通貨として鋳造することができる」という法律が可決された。そもそもは記念貨幣発行を意識した動きであった。
しかし、この法律は思わぬ使い方を秘めていた。財務省が例えば1兆ドルの額面のプラチナ貨幣を発行して、FRBに持ち込み、財務省口座に入金すれば、米国債を発行せずに1兆ドルが調達できることになるのだ。1兆ドル相当もの大量のプラチナは存在しないが、標準サイズの1オンス(31.1035グラム)のプラチナコインに1,000,000,000,000ドルの額面をつければよい。このプラチナ法定通貨が市中に流通することもない。鋳造にあたり議会の承認も必要ない。政令である。
この案をクルーグマン教授は支持したが、まさか実際に鋳造の実行を迫っているわけではない。オバマ大統領が債務上限引き上げにより歳出強制削減回避を図るが、議会は拒否姿勢。このままではデフォルトも想定外とはいえず、という瀬戸際の状況ともなれば、この案が「最後の手段」として考慮されても止む無しとの判断のようだ。債務上限引き上げ交渉が決裂しても、この代替手段であれば、デフォルトは回避できる。デフォルトのような破滅的可能性をちらつかせ大統領を脅迫するようなクレージーなやり方に対しては、クレージーな方策も選択肢に入る。そこで「Why not? いいじゃない」とのコメントが出てくる。
とはいえ、どう見ても、非現実的な政策手段である。
債務の崖問題先送りで積み残しとなった歳出削減の問題と、2月にも瀬戸際を迎える公的債務上限法の問題についての交渉の行き詰まり懸念から苦し紛れに出てきた案程度に捉えるべきであろう。

さて、国際金価格は反発しましたが、ドル円が若干円高に振れて、円建て金価格に著変なし。中長期的には安倍政権のインフレ政策で日本人として金を保有する意味が増したと感じています。

なお、今朝の日経2面に昨日の「金つぶ」が紹介されています。
考えてみると、中東の火薬庫に囲まれるイスラエルも、北朝鮮、中国、ロシアに囲まれる日本も、同じような地政学的リスクをかかえているように米国からは見えるのですね。

それから日本の企業年金の金投資についての記事がブルームバーグを通じて世界に流れました。
日本語版↓
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MFCTBH6KLVR401.html

ワシントンポスト掲載↓
http://washpost.bloomberg.com/Story?docId=1376-MFCTTZ0YHQ0X01-3OD4L82EMIVJ217NF1BQ8NUMLQ

2013年