2013年6月14日
これまで量的緩和から発する過剰流動性を当て込んでいた市場が、その点滴を抜かれること(緩和縮小の可能性)を恐れ、依存症からの脱却の苦しみを感じ始めている。
米国のtaper(緩和逓減)見通しは、第一段階でドル金利上昇観測のもと、外為市場では、ドル買いを誘発した。
そして第二段階に入り、アベノミクスへの失望感がキッカケとなり、円キャリートレード(円売り、新興国通貨買いのポジション)の巻き戻しと、米国経済のソフト・パッチ(一時的減速)を懸念するドル売りにより、円高が進行した。
更に、新興国にばら撒かれた米国発の緩和マネーがtaper(緩和逓減)の流れの中で回収される、との観測から、新興国通貨売りが誘発された。そもそも新興国経済減速も嫌気されている。
また、欧州債務危機によりユーロを嫌ったマネーが、先進国より財政状態が良好とされた新興国のソブリン債など債券で運用されてきた。このリアル・マネーも先進国へリアロケーション(運用シフト)されつつある。
5月にニューヨーク証券取引所のフロアーを訪問したときも、新興国から先進国へのマネー回帰を実感した。
但し、これまでマネーの受け皿となってきた米国債が、緩和縮小観測により、売られ始めている。そこで、キャッシュ・ポジションが急増している。「有事の現金」とでも言おうか。ウオール街を訪問しても、肩すくめて、「当面はキャッシュにパーキング」と語るファンド・マネージャーが少なくなかった。なお、「流動性への逃避」で米国債に留まるマネーもある。
それにしても、今回は通貨価値変動のボラティリティーが異常に高い。これは、円や新興国通貨の市場規模がドル・ユーロに比し、小さいことが影響しているだろう。
世界の為替取引シェアは、BIS統計を見ると、米ドル42%、ユーロ20%、円10%、豪ドル4%、カナダドル3%程度とされる。
円などは、日本株長期低迷の時期は「ジャパン・パッシング(素通り)」現象顕著の中で、ローカル・カレンシー扱いであった。それが、アベノミクスをキッカケに突然、ヘッジファンドの草刈り場と化した。慣れぬ外海の荒波に晒されているわけだ。
日本株も円も、結局は欧米投機筋に翻弄されている。
その結果、トレンドは円安なのだが、短期的オーバーシュートやアンダーシュートの振れが異常に大きくなっている。
アベノミクスも、いまや、欧米ヘッジファンドにもてあそばれている、といっても過言ではなかろう。
長らく素通りされてきた日本市場が始めて経験する、欧米投機マネーの洗礼ともいえよう。
ここで、日本側がパニックになっては、相手の思うツボだ。
冷静に、日本株なら企業業績、円相場ならファンダメンタルズを吟味して対応するべき時である。
ボラティリティーは投資家への「目つぶし」程度と考えるべきだろう。
依存症患者がクスリを抜くときには、一時的苦痛を味わうが、その後には、平常の生活に戻ることが出来るのだ。
なお、国内金価格が円高で急落し、日本市場では投資家の買いが急増中だ。円安トレンドの調整ゆえ、理解できる動きだ。