2013年1月21日
これまで中国は人民銀行が市場の人民元買いを吸収することで人為的に自国通貨を高めに誘導し、「為替操作国」と非難されてきた。中国は米国の製造業を空洞化することで「失業」を輸出している、とも言われた。
そして、今、日本が「デフレを輸出する国」「隣国の雇用を奪いデフレ脱却を図る国」として国際社会から「イエローカード」を突き付けられている。
「為替政策」とは往々にして「為替操作」と紙一重の危うさを持つ。
特に、政権要人の口先介入で「石破ライン85円-90円」とか「浜田ライン95-100円」などを市場にあけすけに意識させる「円安政策」は、その政策の品格を問われる。
なりふりかまわず全力でデフレ脱却に動く政権の言動に対し、選挙民は半信半疑ながらも心地良い響きを感じるかもしれない。しかし、TPP参加は逡巡し、隣国を踏み台にしても国益を優先、となると国際的反発を誘発する。本欄11日付けに「今週、世界モーターショーが開催されているデトロイトでは日本勢の巻き返し現象が顕著だ。ドル高が続けば、米国内産業もだまってはいまい。」と書いたが、早くも自動車ビッグ3で構成するAAPC(米自動車貿易政策評議会)が、円高修正目指す安倍政権を「近隣窮乏化策」と批判。対抗措置を大統領に要請した。
ドル円90円程度までは、世界も「落ち目とはいえ世界第三位の経済大国が元気になってもらわないとグローバル経済も困る」との認識で反則切符は切られなかった。しかし、一気に95円-100円誘導に突進すれば、国際ルールで「オフサイド」と認定されよう。
そもそも、国内ではデフレといわれるが、アジアの中で、日本はダントツの生活水準を維持している。この経済的繁栄が様々な規制の上に成り立っていることは否定できない。
それら規制を撤廃することは選挙民に痛みを課すので政治家は先送りする。
本来は、同じルールのもと、同じ土俵の上で、競うべきだ。自国が比較優位を持つ産業に特化し、比較劣位産業は優位を持つ国に譲る互譲の精神こそが国際貿易の基本である。さすれば、1プラス1が3にもなるのだ。パイの取り合いでデフレを輸出しあうのではなく、パイを大きくする世界経済成長モデルとなる。
しかし、貿易自由化も過渡期には短期的失業を生み、選挙民に痛みを与える。
そこで、選挙民が痛みを感じにくい、(無制限?)量的緩和などの金融政策と巨額の財政出動、そして円安誘導がデフレ脱却政策第一弾として華々しく祭り上げられるわけだ。三本の矢の最後の「成長戦略」は痛みも伴い、効果が出るにしても1年以上はかかる。選挙民も忍耐の限界ゆえ、目に見える即効性を期待し、焦れがちだ。
しかし、構造改革のような病巣にメスを入れる治療なかりせば、糖尿病の如く、痛みを感じなくても、病状は進行する。出血は止まっても、経済の基礎体力は戻らない。
そもそも、今の円安の基礎的要因の一つが貿易収支赤字化だ。日本国の経済成長を支えてきた輸出産業の衰退化の結果の円安ともいえる。
しかし、円安が進行すれば、輸出産業も息を吹き返し、やがて貿易収支は再度黒字に転換し、外為市場では円高圧力がかかる。これが変動相場制における外国為替レートが抱合する自動安定メカニズムだ。そのプロセスでの短期的攪乱要因がシカゴIMM通貨投機筋などの投機マネー。そのマネー騒擾を刺激するのが要人発言なのだ。
バーナンキFRB議長は、常に「市場とのコミュニケーション=対話」「政策の透明性」を重んじ、FOMC後には、学者としての見識にユーモアを交ぜつつ、自ら記者会見で1時間忍耐強く記者団の質問に答える。しかし、ガイトナー財務長官や、民主党幹部、そしてオバマ大統領の政策ブレインが具体的ドル相場水準に言及することはない。
安倍政権にも経済政策の品格が問われているのだ。
さて、国内金価格も為替次第の展開。
それにしても、株高で個人投資家がリスクオンになっていることを週末開催された東証セミナーで実感。講演後、ロビーで囲まれ自然発生的に色々質疑応答となったのだが、質問は多岐に亘り、投資家の熱さと同時に不安も感じた。不安とは、未だ安倍株高が半信半疑という意味だ。こんな円安がいつまで続くのか、という嬉しいながらも当惑が感じられた。講演開始からロビーでの辻説法まで一部始終をガイアの夜明けのカメラが廻って撮影していたので、その一部が後日OAされるかもしれない。(これは編集次第。)
土曜日午後の閑散と人気のない兜町の中で、東証アローズのそばの200人収容の東証ホールだけがムンムンしていたことが印象的。
あとの休日は「ガイア」から「ガーラ」へ♪
安倍円安の余波で仕事が増え、スキー回数が、昨対でマイナス75%!
WLB(ワークライフバランス)が崩壊しております。 笑