豊島逸夫の手帖

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ロムニー勝利なら金売り円安

2012年11月2日

金市場から見る米大統領選挙の景色だが、ロムニー勝利なら金は下げ。バーナンキFRB議長のQE(量的緩和政策)継続が不確定になるからだ。
共和党内には量的緩和の副作用ともいえるインフレへの警戒感が強く、現FRBへの批判が厳しい。「バーナンキ更迭論」さえ語られる。現実的には2014年1月まで同氏は続投するであろうが、ホワイトハウスとFRBの間の軋みは顕在化し、中央銀行の独立性維持も危ぶまれる。FRB理事の間でも「タカ派」即ちQE反対論を唱える陣営が勢いづく可能性もある。
そこで、仮にも、バーナンキ氏が次期続投に否定的な発言でもすれば、マーケットは即、株、商品売り、ドル買いで強く反応するだろう。

今の市場は「QE依存症」に陥っている。
金は米ドル・マネタリーベース激増による米ドル価値希薄化により代替通貨として買い上げられてきた。金価格が上昇というより米ドル価値が薄まった、というほうが正しい。それだけに、前提となるQEという梯子が外れる、或いは揺らぐ場合には殊更に強く反応することは必至だ。
米ドルも「通貨の堕落化」懸念による不安感で売られてきたことを思えば、QE亡き世界では、反動で買われ、円安となろう。
株、商品をマクロで見れば、QEから生じる過剰流動性を当て込み、先取りして買われてきた面が強い。故に、ロムニー勝利は短期的には売り材料とされよう。しかし、共和党は基本的に経済界そして銀行などマーケット参加者にはフレンドリー(友好的)であり、長期的には市場が歓迎ムードに転じる可能性も強い。共和党が提示するQEに代替する経済政策次第である。当初の売りは、あくまで、過剰流動性による投機的買いの剥落現象といえる。
その過剰流動性は新興国経済も直撃し、新興国政府は、インフレ抑制と経済成長の相反する経済政策目標に挟まれ、政策上の綱渡りを強いられてきた。川上のFRBダムから勝手にドル流動性を放流されるリスクが薄まれば、川下の新興国経済の不安定要因の一つは薄まり、経済成長に政策の軸足をより踏み込む環境が整うことになる。

以上、主にQEに絞り、大統領選挙への影響を吟味してきたが、
方程式の変数はQEだけではない。
しかし、マーケットの日々の動きを見るに、オバマ大統領の発言よりバーナンキ講演でのコメントのほうに遥かに注目度が強いことは事実である。

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2012年