2012年3月13日
ポルトガルは東日本大震災クラスの大地震に1755年に襲われている。リスボン市は壊滅。奇跡的に崩壊せず残った建築物が世界遺産ジェロニモ修道院というから、優れた耐震構造技術も存在したようだ。
リスボン大地震前までは、大航海時代で世界の海を征した国。ヴァスコ・ダ・ガマの世界一周の偉業を記念して造られた世界遺産ベレンの塔が、当時の繁栄を雄弁に物語る。
しかし、大地震のダメージはジワジワとポルトガル経済の基礎体力を奪い、産業は空洞化し、現在に至る「失われた250年」の長期衰退の道を歩むことになる。震災後の政治対応に長期的ビジョンを欠くとこうなる、という意味で一日本人としては、リスボンで警鐘を聞いた思いだ。
今や、産業といっても、水産、コルクなど経済基盤としては覚束ない。
ジェロニモ修道院内で友人のポルトガル人(61歳)が語る。
「ギリシャと一緒にされたくない。我が国は約束は守る。」
しかし、前々回、本欄に書いたように、ギリシャの債務は削減されたのに、ポルトガルの債務はそのまま、では「正直者が馬鹿を見る」と言いたくもなろう。
いま、欧米市場ではポルトガル「6月危機説」が流れる。100億ユーロの国債償還を迎えるからだ。長期衰退の国が発行した国債が「ジャンク債並み」の格付けの烙印を押された今、債務削減は不可避とも見える。
市場の懸念も顕在化。ポルトガル国債10年物の利回りも13.71%にまで再上昇してきた。
そしてスペインやイタリアの国民が、一連のギリシャ救済、債務削減劇を「羨望の眼差し」で見始めた兆しも気になる。
デフォルトすれば、債務は削減される。しかし、同時に、将来国債発行で資金調達の為の「債券市場」へのアクセスを断たれる。「敗者復活戦」の見込みは極めて薄い。
とはいえ、足元で賃金、年金をカットされ、リストラされる事態が加速してくると、国民の判断も冷静さを欠く結果になりがちだ。
4-6月は欧州債務危機が再び市場を席巻しそう。
最悪のシナリオとしては、4月か5月に総選挙でギリシャ新政権誕生。反緊縮のマニュフェストを掲げ、旧政権とEUとの救済合意を棚上げして再交渉開始。4月のフランス大統領選挙ではサルコジ敗北。オランド新大統領は反メルケルを声高に唱えており、救済側の枢軸にも亀裂が入る。そして6月にはポルトガル債務削減交渉。アイルランドも続く。
このシナリオは極論としても、マーケットは再びリスク・オフ・モードとなり、リスク回避の売りが出そうな様相だ。。。
Sell in May and go away (気候の良い5月には相場など売り払って人生を楽しもう)という相場格言が響く。