豊島逸夫の手帖

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有明の月を待ち出でつるかな

2012年8月21日

「今 来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな」
長い夜が明け始めて白々と空に残る月の姿と、裏切られ待ちくたびれた女の心を詠んだお馴染み百人一首の歌が、今のマーケットのココロを代弁しているかのようだ。

週末の独誌が「ECBが南欧国債の対独国債利回り格差に目標設定し、国債を購入することを検討している」との報道で、いよいよ愛しのドラギさんもマーケットを向いて動き始めたかとの期待感が一気に膨らんだが、昨日、ECBからアッサリ否定されてしまった。
そもそも、いとしのドラギさんは前回のECB理事会の前週に「ユーロを守るためには何でもする。Believe me ! 私を信じて!」と言い切ったので、マーケットには「理事会でいよいよ国債買い入れ決定か」との観測が流れたが、これも肩すかしに終わった記憶が未だ鮮明に残る。
かたや、こちらも愛しのバーナンキさんが、FOMCのたびにQE3に秋波を送ってくれるかとマーケットは期待しつつ、ずっと裏切られてきた。
でも、これだけ袖にされても、あきらめられず、思いは募るばかり。ドラギさんとバーナンキさんがいつかやってくれるだろうという期待感は消えない。否、益々、今度こそ、と強まる。

今、NY市場では株も商品も「ステルス・ラリー」という言葉がはやっている。姿がレーダーに映らないステルス機に例え、株も商品も日々の売買量が少ないシーンとした状況で、ジワジワ上がっているからだ。
その背景には、やはり、金融緩和期待があることは間違いない。
筆者は、いずれ、この期待に答えてくれると信じている。
欧州経済は緊縮の影響でマイナス成長。
米国経済は今年末に「財政の崖」から転がり落ちる。
ブッシュ減税が失効することで2210億ドルの実質増税効果。国家債務上限法の上限に達した公的債務について超党派の委員会が対応策を纏めることが出来ないと一律財政支出強制カット発動。失業手当の優遇措置も消滅する。結局、5600億ドル相当の財政支援カットになるので、GDP年間成長率に換算すれば4%相当の減速との試算もある。もし、その数字通りとなれば、米国もマイナス成長となる。この「財政の崖」問題がちらつくので、民間の投資マインドも冴えない。
ここは、やはり元気づけにステロイドをもう一本打たねばなるまい。

さて、ここにきて、消費増税がらみで金が注目され取材が急増中。明日はテレ朝のやじうまワイドで扱うそうで、今日、事務所にカメラが入る。

2012年