豊島逸夫の手帖

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ギリシャ攻防、未だ5回裏

2012年2月7日

今朝の日経朝刊総合面記事「ギリシャ 賃金・年金の壁 国民、削減に反発 大規模スト計画」
そして「独仏、最終決断迫る 支援条件譲歩せず」

しかし、筆者がアテネで強く感じたことだが、ギリシャ国民がこれ以上、支援条件=更なる緊縮を受け入れる気はない、否、出来ない。月収500ユーロ(約50,000円)では生活できない。
ギリシャ首相にしても4月には総選挙を控える。仮にこれが日本として総選挙2か月前に、首相が国民に対し、最低賃金20%追加カット、年金20%追加カット、そして公務員12,000名削減を「お願い」したらどうなるか。
対してフランクフルトで感じたことは、当たり前のことだが、ドイツにはカネがある。ただ、イソップ物語に例えれば、アリ組がキリギリス組を救済することに国民的抵抗が強いので、「支援条件譲歩できず」ということだ。しかし、キリギリス組にアリになれといっても所詮無理筋。
結論としては、最後はユーロ崩壊を回避するためドイツが譲歩せざるを得ないと思う。

ドイツといっても、政治の都=ベルリンと、経済の街=フランクフルトではかなり温度差がある。ベルリンは、国民の抵抗感に敏感だが、フランクフルトはユーロの恩恵を最も強く感じており、ギリシャ救済止む無しの論調が見られた。
そこで、万策尽きたギリシャに対し、ドイツには、未だいよいよとなれば、妥協の余地ありと筆者は見たわけだ。
メルケル首相は当然のことながら、最後の最後まで突っ張るだろう。「支援条件譲歩せず」 この言葉を市場は何回聞いたことか。それでも彼女の立場では言い続けねばならぬ。
その上で、まさにデフォルト寸前に妥協策を提示し、問題の解決を先送りせざるを得まい。

ギリシャ問題は、チーム・キリギリスとチーム・アリの攻防を野球に例えれば、まだ5回裏である。

2012年