豊島逸夫の手帖

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欧米で急浮上 2013年日本債務問題

2012年12月14日

米国テレビ局の「日本総選挙特番」関連取材を受けた。30年以上の相場生活で、日本の総選挙がかくまで材料視されることは初めての経験だ。円の独歩安現象もマーケットの注目を増幅させる。
矢継ぎ早のキャスターからの質問にも、米国・欧州の次は日本の番。「Japan's debt crisis(日本債務危機)」というような過激な言葉が混じる。
欧州債務危機が遅々としたペースながらも解決の道を歩んでいるのに対し、「何も決められない」ジャパンの公的債務問題が2013年にはグローバルにかなり意識されかねない雲行きを肌で感じる。
答える側としても、コメントが編集されて引用されるので、むやみに危機感を煽らぬように英語の単語の選択には気を使う。
特に突っ込まれたことは「日本の成長戦略」。欧米経済が成長と緊縮の狭間で呻吟しているからだろう。
この問題を掘り下げられると、はっきり言って答えに貧する。断片的に戦術的(tactical)対応は見られるが、戦略(strategy)はと聞かれ、思わず「None(無い)」と返答してしまった。
少子高齢化、そして世代間も含め所得格差の問題にトピックが移ったとき、キャスターが引き合いに出したエピソードが、バフェット氏とソロス氏の御大二人の連名による富裕層増税提案。
「相続税の45%以上へのスライド式引き上げ。控除額も1千万ドルから4百万ドルへ引き下げ。」を自主的に提唱。「富とパワーの集中を減速させることは民主主義において道徳的にも経済的にも適当」と語っている。
連名状には、ビル・ゲイツ、ジミー・カーターなどの名前も並ぶ。
「日本でも世代間所得再配分の問題は議論されている。しかし、超富裕層が自ら相続税引き下げを連名で提唱して議論をリードするような動きはない。」と答えた。
米国人キャスターと論じていると、円より米ドルに「経済のダイナミズム」を感じざるを得ない。
しかし、先方も「米国も、今や、People's Republic of America (米人民共和国)。企業家精神やアメリカン・ドリームを萎縮させるような人民迎合的政策が目立つ」と述懐していたことが印象に残る。

さて、欧米市場のイベント・カレンダーには12月16日「日本総選挙」、12月19-20日「日銀金融政策決定会合」が書き込まれた。自公優勢の報道は既に織り込まれている。
こうなると、短期的には円を「噂で売って、ニュースで買う」プロの常套手段が透けて見えてくる。そして、来年の市場展望には「ジャパンの債務問題」が書き加えられそうな様相である。

さて、金価格は昨日アジア時間午前に米国からのまとまった売りが市場をヒット。再び1700ドルの大台を割り込んだ。クリスマス前のロング(買い持ち)ポジションの売り手仕舞い攻勢だ。
もっとも取引の薄い時間帯を狙った波状攻撃で、一気に1700ドルの大台を破った。
「財政の崖」問題が、リスク回避の売り材料とされていることが、意外な展開。財政の崖→ドル安→金高と読んでいたので。
たしかに対円を除けば、ドル安傾向だが、金は売られている。市況の法則に反する展開だ。ドルとの逆相関が薄れ、「リスク許容度」との相関が強まっているようだ。
1700ドル以下は中国インドが支える構図は不変。

なお、日経ビジネスオンライン「豊島逸夫の金脈探訪」更新。
「中国の金ショップで見た中国経済減速の実態」
http://business.nikkeibp.co.jp

17日月曜日には日経の金融ニッポン委員会セミナー。
総選挙直後のセミナーだけに台本なし。ぶっつけ本番で参加者の質問に答えます。(いつものスタイルだけどね(笑)。)

2012年